”財政再建による民間経済の圧迫”
古代中国から学べる教訓とは?

 均輸法と専売制は、いってしまえば民間の経済活動を政府が奪う民業圧迫であり、形を変えた増税です。財政再建が民間経済を圧迫するという問題は、消費税増税の是非を巡る今日の議論とまったく同じです。

 民主政治が生まれなかった中国では、許認可権を握る官僚が、民間業者の生殺与奪を握ります。そのため、業者は官僚にわいろを贈り、公共事業が利権化して政治は腐敗していきました。わいろを贈れない庶民は、張角という宗教指導者のもとに集まり黄巾の乱を起こします。漢王朝はこれで崩壊しました。

 唐王朝は、国有地(均田)を人民に貸し与えて租庸調(税)をとり立て、大帝国を築きます。しかし重税を嫌う農民の逃亡によってこれが破綻すると、今度は塩を専売制にしてむちゃくちゃな塩税をかけたため、塩の密売人が暗躍し、密売人の指導者・黄巣が大反乱を起こして無政府状態に陥りました。日本が遣唐使を廃止する20年前のことです。

「官僚機構の肥大化と軍事費の拡大→増税と民業圧迫→景気後退と貧困層の増大→農民暴動と軍の離反→王朝崩壊」というパターンは、このあと明朝、清朝でも繰り返されます。こうした伝統を受け継いでいるためか、現代中国でも、官僚の汚職が深刻化しています。

(次回掲載は、12月9日の予定です)


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