先進国が金融危機の余波から抜け出せないでいるなか、いち早く「V字型の景気回復」を果たし、今年日本を抜いて世界第2位の経済大国となることが確実な中国。しかし、地球温暖化対策の拒絶、グーグル問題に見られる不都合な情報の遮断、海外での資源買い漁り、少数民族問題への強硬な対応など、その行動に違和感を覚える識者は世界に数多い。

 中国事情に詳しい北海道大学大学院准教授の遊川和郎氏は、著書でこうした中国の行動様式を「強欲社会主義」と説く。「日中逆転」「G2時代」と言われるなか、中国はどこに向かっていくのか? そして世界は、日本は、中国とどのように向き合っていけばよいのか? 遊川氏に聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 中島 恵)

――中国は驚くべき経済成長を実現し、存在感を強めていますね。

 中国の存在感を考える上で、まず2000年代に何が起きていたのか振り返ってみる必要があります。それは、中国の“全球化”(グローバル化)が進んだということです。

 2001年にWTOに加盟したのをきっかけに、中国にヒト、モノ、カネが吸い寄せられると同時に、中国からも経済合理性を求めてヒト、モノ、カネが地球の隅々にまで拡散しました。

 その結果、安価な中国製品が世界の消費者に供給されるという恩恵をもたらす一方で、安全性に問題のある中国製品も世界に広がりました。これは、それまで中国の国内問題だったことも“全球化”され、世界は中国の問題を直接・間接に引き受けなくてはならなくなったことを意味しています。

 また一方では、中国の「がぶ飲み」と形容される資源需要によって資源価格が一気に高騰しました。世界の物価は中国によって決められているということです。

 過去数年、日本では「ワーキング・プア」が社会問題化しましたが、これも元はと言えば、貿易財の価格が中国標準に収斂する中で、賃金も中国水準に引き寄せられざるを得ず、それを非正規雇用という形でしのいでいるに過ぎません。中国の全球化が伏線となっていることを、忘れてはならないのです。

 つい最近では、春節の中国人観光客による日本での豪快な「買物ぶり」が話題になりましたが、中国人が豊かになった影響が、中国国内だけでなく津波のように日本にも押し寄せてきています。