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山崎元のマネー経済の歩き方

商品相場の難しさについて

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第32回】 2008年5月20日
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 筆者は証券会社の社員でもあるので、株式は自由に売買できない。会社の取引口座でのみの売買で、その場合は事前に会社に申し出て許可を取り、株式を買った場合は一定期間保有し、短期売買しないことが社内ルール上必要だ。長期的な資産形成のために株式投資をするならこれで困ることはないが、「楽しみ」のための株式売買には不自由だ。対外的に株式市場についてコメントすることも多いので、現在、自分では株式投資をやっていない。楽しみのための相場参加なら、通称「FX」、外国為替証拠金取引も楽しそうだが、勤務先の証券会社が手がけているので、これにも参加できない。

 筆者が相場もので遊ぶなら、商品先物相場ということになる。商品先物相場は、原油価格が1バレル120ドルを超えるなど全般に活況を呈しているし、レバレッジは株式の信用取引が子どもに見えるくらい大きいので、刺激は十分だ。最近は、商品相場でもネット取引が発達してきたので、自分のペースで遊ぶこともできる。

 そんな理由で、筆者もネット取引の口座を持っているのだが、口座を開設したときに金を少々取引しただけで、長らく相場に参加していない。せっかくのチャンスなのにもったいない気もするのだが、理由を考えてみると、商品相場の難しさに気がつく。

 商品相場のどこが難しいかというと、個々の商品の経済的な「価値」がわかりにくいことだ。たとえば、原油が重要な商品であることはわかるが、価格は需給から決まる。ガソリンだの化学製品だの電力だのといった最終製品への需要と、その需要から派生する原材料商品への需要がどうなっているかがわからなければ、需要サイドを考える術がない。世界の石油生産量に関する統計は一応あるが、埋蔵量や当面の増産余力については報道がバラバラで、筆者の持つ情報と判断力では、供給サイドもよくわからない。需要供給共によくわからないので、価格が判断できない。他の商品も同様だ。

 バーナンキFRB議長は4月初旬の議会証言で、物価について問われて、世界景気の減速から商品相場が下落する見通しで、物価は落ち着くだろうと答えた。中央銀行の総裁が商品相場の見通しを語るのには驚いたが、その後、原油価格は高騰した。マクロ経済の見通しで相場を張るのも難しく、実際的ではない。

 一方、株式の場合は企業に関する情報と、金利やリスク・プレミアム(投資家がリスクに対して要求する追加的な収益率)を参考に、会社の価値や株式のあるべき価値を(厳密かつ確実にではないが)ある程度は考えられるので、参加しやすい。また株式投資は資本を通じた生産への参加であり、理屈上はリスクを補償するプラスの収益率が期待できる「投資」だから、分散投資でリスクを下げつつ、ある種漫然と行なうことができる。

 しかし、商品相場は、売り方と買い方が相手の見通しの誤りに賭けるゼロサム・ゲーム的な「投機」なので、自分のオピニオンがないと参加できない。

 ちなみに、為替相場は、基本的にゼロサム・ゲームだが、為替レートの価値を判断する理論とデータはあるので(株式よりも格段に複雑で難しいが)、ゲームとしては、株式と商品相場の中間だ。

 商品取引業界は、商品の需給や価値に関する基本的な情報をもっと提供するように工夫してほしい。個人的には環境が整うまで待ち切れないので、考える手がかりがつかめそうな商品を探して、またチャレンジしてみたいと思っている。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

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