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逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

其の55「論語」を読む。
点取り虫エリートを育てる教育の行き着く先

江上 剛 [作家]
【第56回】 2013年12月10日
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 「みずほ銀行はなぜあんなに見事に墓穴を掘ったのだろうか?」

 こんな質問を受けた。

 オリコの暴力団組員への融資で金融庁から業務改善命令を受けてからのみずほ銀行の一連の行動に関しての質問だ。

 質問したのは、一流の経営者だ。自分ならあんな不様にはならないとでも言いたげだ。果たしてそうだろうか。あの一連の行動は、みずほ銀行特有のことだろうか。

 一連の行動を整理してみると①業務改善命令を受けて広報は記者に対するレクチャーだけで済まそうとした。②親しい記者だけを呼び、頭取に説明させた。③追い込まれて副頭取が記者会見し、『頭取は知らない』と答えた。④頭取がようやく記者会見をし『知っていた』と答えた。すわ、隠蔽、検査忌避かとなり、問題は金融検査にまで及んだ。⑤国会に呼ばれ、認識が甘かった、年間報酬1億2000万円もあるのにそれを半分にした処分で、『妥当』と居直った。云々。

 初期対応を間違ったために、まるで坂を転げ落ちるように、みずほ銀行側にしてみれば『想定外』の事態に進んで行った。

 『想定外』の事態を呼びこんでしまう危機管理、クライシスマネジメントの失敗だ。今回の事態は、みずほ銀行特有の失敗ではなく、企業一般に言えるのではないか。

薩摩藩の『郷中教育』

 歴史家の磯田道史さんが、『歴史の読み解き方』(朝日新書)の中で面白い指摘をされている。それは言わば『想定外』を無くす教育。その例として薩摩藩の『郷中教育』を紹介されている。

 薩摩藩は、文字を読める人が少なく、子どもたちは先輩から、文字ではなく実践的な教育を受けていた。それが『郷中教育』で、先輩からの問いに対して子どもたちはあらゆる事態を想定して実践的な回答を探し出し、答えるという。とにかく子どもたちに考えさせる教育。

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江上 剛 [作家]

えがみ ごう/1954年1月7日兵庫県生まれ。本名小畠晴喜(こはた はるき)。77年3月早稲田大学政経学部卒業。同年4月旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。高田馬場、築地などの支店長を歴任後、2003年3月同行退行。1997年に起きた第一勧銀総会屋利益供与事件では、広報部次長として混乱収拾に尽力する。『呪縛 金融腐蝕列島』(高杉良作・角川書店)の小説やそれを原作とする映画のモデルとなる。2002年『非情銀行』(新潮社)で作家デビュー。以後、作家に専念するも10年7月日本振興銀行の社長に就任し、本邦初のペイオフを適用される。


逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

作家・江上剛氏は、その人生で2回も当局による強制捜査を経験した。その逆境にあって、心を支えくれたのが、「聖書」「論語」「孫子」などの古典の言葉である。ビジネス界に身を置けば、さまざまな逆風にされされることも多い。どんな逆境にあっても、明るく前向きに生きる江上剛氏が、柔術ならぬ“剛術”で古典を読み解き、勇気と元気の“素”を贈る。

「逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―」

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