アップルが買収したイスラエルの会社、プライムセンス。同社の技術を用いてアップルはいったい何をしようとしているのか。テクノロジー関係者の間では議論が絶えない。

 プライムセンスは、3Dセンサー技術を開発する会社だ。3Dセンサーとは、奥行きのある空間の中での動きをキャッチするセンサーのこと。人の移動やジェスチャーなどがそれに含まれる。マイクロソフトの「キネクト」にも同社の技術が搭載されたが、そのおかげで子どもたちがディスプレイの前で飛んだり踊ったりするのが画面にも反映される。

 キネクト以外にも同社にはすでにいくつものおもしろい応用例がある。たとえば、3Dプリンターメーカーである3Dシステムズの「センス」という製品に搭載された技術では、片手で持てるスキャナーでモノをなぞるだけで、その3次元モデルがコンピュータの中に構築される。3次元モデルのデータがあれば、3Dプリンターを利用して同じかたちを作り出すこともできる。

 また、オーグメンテッドリアリティー(仮想現実)を統合したコンピュータゲームや、障害物をよけながら移動するロボットにもすでに利用が進んでいる。面白い例は、ブティックの試着室で身体をスキャンし、体型に合った服を選びやすくするといった使い方だ。これは、すでに実用化されているもの。

次世代「アップルTV」には
リモコンがないのか

 さて、このどれがアップルのビジネスに合っているのか。

 すぐに関連づけられたのは、「アップルTV」での利用である。アップルTVによって大きなディスプレイでテレビや映画、インターネットを観ることができるようになったが、プライムセンスの技術があれば、ちょうどキネクトのようにジェスチャーでチャンネルを切り替えたり、ボリュームを大きくしたりすることができる。リモコンを探すことなく、気が向いたら腕を振り回してさっさと別の番組に変えることができるわけだ。

 また、iTunesから音楽を流していれば、他のアーティストの曲をジェスチャーで呼び出したりできるだろう。この場合は、手元のタブレットやスマートフォンの画面を見なくても、手首を縦に振れば次のアーティスト、横に振れば次の曲といったようなルールに添って、そうした入力が可能になるのかもしれない。