製品・サービスのCSVとは、環境に配慮した製品などで、米国GEの「エコマジネーション」やバングラデシュでグラミン銀行が行う「マイクロファイナンス」などが挙げられる。次図のように、4つの創出パターンにまとめることができる。

 バリューチェーンのCSVとは、流通システムやサプライヤーの育成によって諸問題の解決に貢献しようという動き。ネスレが途上国の農家を育成したり、朝日新聞とパナソニックが配送でタッグを組んでいる例がある。

 また、クラスター(競争基盤)のCSVは、地域の人材育成やインフラ強化で企業競争力を底支えするものだ。

「各企業が自社の強みを活かし、できることに取り組めばよいのです。さらに、取り組みは部署や営業所、チームごとに異なっていても構いません」

地域や中小企業の
間に広まるCSV

 グローバル企業や国内の大企業の事例だけでなく、人知れずCSV的な活動に勤しんでいる中小企業、地方企業も多い。

「会社の会議室をコミュニティ活動や学童保育の場として開放するなど、150超の地域活動を行う千葉の大里綜合管理という企業があります。他にも、義肢などの医療器具の中村ブレイス、絶対に社員をリストラせずリサイクルなどにも励む伊那食品工業などが一例です」

 これらの企業は、近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)のような精神で、地域社会のニーズを本業に取り込み、企業価値や競争力を高めている好例だろう。このような例は全国に多数あり、​CSRやCSVといった用語をあえて掲げない企業も多い。

「地域社会、世間というものを重視してきた日本の企業風土を考えた時、CSVは日本にこそ馴染みやすいとも言えます。中小企業の活動からは、理念、経営者の思いという面で大企業も学ぶべきことが多いはずです」

14年以降のCSR、
CSVの動きは?

 世界各地で干ばつによる不作や台風、大洪水、竜巻などの被害が相次いでいる。地球温暖化や環境問題に、世界中でかつてない関心が集まる中、社会・環境問題を意識したCSR、CSVの動きがさらに活発になると、水上氏は指摘する。そしてCSR、CSVが広まっていくためのいくつかの条件を挙げる。

「一つには、イントレプレナー(社内起業家)的なキーマンの出現と養成です。不況でも中断しない、中長期的なCSVを社内で先頭に立って広げていく人材がより増えることが望まれます。同時に、例えば資力に劣る中小企業などがCSVに基づいた中長期の投資や事業が行えるよう、金融面でサポートする​C​S​V​ファンドが続々と出現することを期待しています」

 昨今、「就活」の資料として企業の「CSR、CSV報告書」を丹念に読む学生が増えている。近い将来、CSR、​CSVは、社会貢献したいという学生の意欲を取り込む材料ともなり、企業の人材採用戦略にも大きな影響を与えるだろう。