今回は、創業50年近い教材制作会社(正社員150人ほど)の制作課で働く40歳目前の男性(非管理職)を紹介しよう。仮にこの男性をA氏とする。

 私はA氏とは取材などを通じ、2007年から現在に至るまで数十回、話し合ってきた。互いによく知る仲である。今回のやり取りの中で筆者が指摘する意見には、A氏にとって少々厳しいものもあるかもしれないが、決して口論の類を仕掛けているわけではない。

 A氏は、入学難易度が相当に高い大学を卒業し、新卒でこの会社に入り、懸命に仕事をしている。しかし、いつしか空しさを感じるようになったという。その理由は、本人も正確にはわかっていない。会社の待遇自体は悪くないからだ。

 最近は、直属の上司である課長や、その上の部長からの指示などに強い不満を持つ。本人いわく、「不満が止まらない」とのこと。そんな「悶える心理」の奥に何が横たわっているのか、解き明かしたいと思う。


上司が誰なのか、わからない
「ワンマン・ツーボス」に悶える社員

A氏 上司が誰なのか、わからない。本来は、40代前半の制作課長(女性)。だけど、その上にいる部長(40代後半、男性)から仕事の指示を受けることが多い。週に3~5回は、部長から「こういう仕事をするように」と言われる。

筆者 「ワンマン・ツーボス」の状態ですね。

A氏 その仕事をしていると、今度は課長から「私が指示した仕事は、その後、どうなっているの?」と聞かれる。「部長から指示された仕事をしている」と答えると、課長の顔色が変わる。それで、僕にネチネチと嫌味を言う。部長は制止するどころか、見て見ぬふり。同じ部署の他の部員10人ほども、何も言わない。

筆者 2人の上司は、真摯に向かい合うことがあまりないのですね。