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富田直美 真説・IT考

アマゾンの小型ヘリによる配達
実現するまでの課題を考える

富田直美
【第11回】 2013年12月20日
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 先日来、何度かテレビ等で米国のアマゾンが30分で10マイル圏内に荷物を届ける実験をしているとのニュースを見た人も多くいるだろう。

 あそこに出てきた飛行物体はラジコンの世界ではマルチ・コプターという4から8つの上に向けたプロペラをもったものであり、数年前から中国、ドイツ、アメリカで何社かのラジコン模型のメーカーが売り出している。値段は数千円~50万円。

 皆さんはエッそんなに安いの?と驚くかも知れないが、50万円もだせば、10kg位のものを積め30分位の飛行をし、しかも無線操縦だけでなく、搭載しているGPSで目的地に指示された高度に従って飛行し、プログラムされた通りに元の場所に戻ってくる機能(Coming Home機能)までついている。

 多少難しいヘリコプターなり、飛行機なりの操縦を競うことが趣味である私にとっては、正直言って論外なジャンルなのだが、美しい動画や静止画の空撮をしたい方達にとっては最高の道具である。だからこの飛行物体が多少揺れても、傾いてもカメラを被撮影物にロックオンさせられるような高度なカメラマウントも開発されており、簡単に入手することができる。

 ここで強調したかったのは、実に完成度の高い超小型の物を運べる飛行物体は、ラジコンの趣味の世界から誕生し、多くの趣味人による私設実験が繰り返され、商業用途(平和利用)にも兵器(軍事用途)としても使えるようになっている事実があるということだ。

 アマゾンやDHL、ドイツポストはその完成度の高いマルチ・コプターのビジネス利用として配達という仕事をやらそうとしている……それだけの話だということです。

現実に配達に使うには、多くの課題も

 基本形が完成していても、その応用型(アプリケーション)となるとそれなりのオプション部品の開発が必要となり、同時に安全に依頼主に届く保証を含め多くの課題を解決する必要がある。

 私が想像する範囲でそれらの要件をあげてみよう。ただしその中で、航空管制等にかかわる法制度的な制約は完全に専門外なのであえて触れない。なお、以下では、この飛行物体を“無人キャリヤー”= “キャリヤー”と呼ばせてもらう

・荷物を抱え、着陸後リリースする装置
・受け取り人がIDをかざさないとリリースしないセキュリティ
・無人で受け取るための専用のポストの開発(盗まれず、全天候に対応する)
・複数のキャリヤーが同一搬送飛行ルートに同じタイミングで存在した時のキャリヤー間での衝突回避システム(自動車業界で利用できるシステムは開発中)
・高速で回るナイフのようなプロペラから人を守る安全装置(扇風機にだってガードの網があり、指が入らないようになっている)か、プロペラを内蔵させ、ジェット気流だけ噴射口から吹き出す形状か?
・出来れば、受け取りポスト(まあヘリポートみたいなイメージかな)での自動充電システム(お掃除ロボットの如く)
・全天候への対応、特に強い風雨への対応、多分突風への対応は不可能だろう。

 等々

 まあ、航路の法的な問題が一番の問題かも知れない。素人考えだが、人口密集地では当分実用化は無理のように思える。

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新しいIT技術に基づく製品やサービスは、人間、社会にどんな影響(ポジティブ、ネガティブ)を与えるのか? 先端IT企業9社の経営経験を経て、現在は名門シンクタンクの理事を務め、大学で人間力を教える著者が、わかりにくいITとIT業界の動きを人間力によって立つ問題意識を元に考察する。

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