株式レポート
12月19日 18時0分
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2014年日本株式市場展望 PART 1 - 広木隆「ストラテジーレポート」

はじめに

えーっと、今回のレポートは、題名からもお分かりの通り、マーケットのこと等まじめな内容しか書かれておりません。ネタのようなものは一切含まれておりませんので、最後までお読みになられて「つまらなかった」と苦情を言われても当方は関知致しませんので、その旨悪しからずご承知おきのうえ、お読みくださいますようお願い申し上げます。

最近は相場のことだけ書くと、「今回のレポートはつまらなかった」とクレームが来ることが多い。ストラテジストが相場のことを書いて怒られたんじゃ、たまったものではない。仕方なく、こういう「お断り」を書く次第である。念のために日本語を解説すると、「関知せず」というのは、我関せず、預かり知らぬ、要は知ったこっちゃないという意味である。

世の中には、学術論文のような高度な機関投資家向けレポートから、いわゆる「街の投資顧問業者」が素人向けに提供する「早耳情報」的な低俗なものまで、数多の投資レポートが存在するが、これだけは自信を持って断言できる。書き出しが「えーっと」で始まる投資レポートは古今東西、他にない。

株価は何で決まるか

では始めよう。断っておくが、ここからは退屈なのでそのつもりでお願いします。

前回のレポートで、株価や相場を理屈(理論)で説明ができるのはせいぜい2割がいいところだと述べた。では、その理屈(理論)とはいかなるものか。いろいろな考え方があるが、突き詰めれば「株価は企業業績と金利の関数である」と言えるだろう。

株価 = 業績/金利 … 式(1)

業績と言っても営業利益、経常利益、最終利益などいろいろな段階のものがある。また金利も短期金利から長期金利まで様々な期間の金利がある。もっと正確に言えば、式(1)の右辺で業績を割り引く分母にくる「金利」は、金利にリスクプレミアムを加えた「割引率」である。業績に対する「成長期待」を織り込む場合は、その成長率の分だけ分母の「割引率」から減じてやる必要がある。そこまで考慮すると、右辺の分母は

金利 + リスクプレミアム - 期待成長率

となる。但し、リスクプレミアムや期待成長率というのは明示的に分からないので、推計方法や取扱いが難しい。よってここでの議論は、リスクプレミアムや成長期待もすべてひっくるめた「割引率」と同義の「金利」という概念を使うものとする。

株価×企業業績×グローバル景気

株価を決める第一の要因は企業業績である。式(1)からわかる通り、株価は業績に比例する。業績が伸びれば株価も上がる。このことを見たのがグラフ1である。1970年から法人企業統計の経常利益の対前年変化率とTOPIXの変化率を比べたものである。もちろん、タイムラグ(時間的なずれ)や山谷の大きさの不揃いなどはあるものの、概ね利益が伸びれば株価のリターンも高く、利益が落ち込めば株価も振るわないという傾向が見て取れる。



ではその企業の業績に与えるインパクトの大きい要因は何か。それは世界景気の動向である。いまや日本企業の大半が、少子高齢化で細る国内需要に見切りをつけて、海外で稼ぐようになっている。日本の上場企業の業績は世界景気に連動していると考えるのが自然である。このことを見たのがグラフ2である。グラフ1で使用した法人企業統計の経常利益の変化率をOECD景気先行指数の変化率と比べたものである。


ではその世界景気は来年どうなるか。経済協力開発機構(OECD)は先月、経済見通しを発表した。それによると2014年の世界経済成長率は3.6%になるとの見通しで、5月時点の4.0%から下方修正となった。下方修正の理由は新興国が弱いからで、先進国に限ればむしろ堅調な成長を見込んでいる。

OECDは2014年の米国内総生産(GDP)伸び率について2.9%と予想し、5月時点の2.8%から上方修正した。来年に経済活動が活発化することから、FRBは量的緩和を縮小すべきだと指摘している。OECDに言われるまでもなく昨日のFOMCでFRBは量的緩和縮小を決定した。これについては後でまた触れる。

2014年のユーロ圏の域内総生産(GDP)伸び率については1.0%と予想。5月時点の1.1%から小幅に下方修正したものの、プラス成長を見込んでいる。先日発表されたユーロ圏のPMIも市場予想を上回る良好なものとなったことと併せて考えても、欧州経済は最悪期を脱し、回復に向かっていると見て間違いないだろう。

英国についてはGDP伸び率見通しを大幅に上方修正。5月時点の1.5%から2.4%に引き上げた。OECDは、失業率が7%まで低下すると見込まれる2015年終盤にイングランド銀行(英中央銀行)が利上げを開始すると予想。こうした見方が市場でも優勢になって最近はポンド高のトレンドが明確になっている。昨日発表された英国の失業率は7.4%と市場予想を上回る改善となった。こうなると米英ともに2015年は利上げの時期を探る展開となるかもしれない。

新興国が弱いとは言え、新興国の中核である中国景気は底堅い。OECDは2014年の中国のGDP伸び率は8.2%と予想。5月時点の8.4%から下方修正したが、7.7%の伸びを見込んでいる2013年からは加速するとの見通しを示した。つまり底打ち〜再度、巡航ペースに復帰を見込む。これは最近の中国の経済指標と併せて考えると極めて整合的な予想と思われる。

2014年の日本景気

さて日本についてはどうか。OECDは2014年の日本のGDP伸び率は1.5%になる見通しとし、5月時点の1.4%から上方修正した。13年の見通し1.8%からは鈍化が見込まれているものの、消費増税の影響を考慮しても1.5%成長なら悪くない。悪くないどころか潜在成長率を上回る伸び率である。

これはちょっと甘い感じだ。日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査(民間エコノミストによる日本経済予測の集計調査)によると、消費増税後の2014年度の国内総生産(GDP、年率)見通しは0.78%成長となる見通し。こちらは暦年ではなく年度の予想なのでOECD予測と期間が異なるものの、1%未満の成長率というのは穏当な見通しだろう。

僕は消費税増税後の落ち込みはそれほど深刻なものにならないと考えている。消費税増税後に景気が落ち込むのは、増税前の駆け込みの反動減と増税を嫌気した買い控えが起こるためだ。まず駆け込みの反動減だが、その直後の期(四半期でも年度でもいい)を見れば確かに落ち込むが、それは前の期に需要の先食いがあっただけのことで、需要そのものが雲散霧消、どこかに消えてしまったわけではない。付加価値は前の期に創出されているのだ。

次に増税を嫌気した買い控えだが、それもいつまでも続くものではない。なぜなら次の増税があることを知っているからだ。次の増税前に、駆け込みとはいかなくても、買っておこうという消費行動がじわりと出てくるだろう。典型例はマンション販売だ。

首都圏のマンション販売は順調に伸びている。現行の消費税率を適用する経過措置が9月に終了したものの、10月に続き11月の発売戸数も前年同月比で2割強の増加となった。つまり、増税前の駆け込みが終わっても売れ続けている。理由は価格の先高観だろう。マンション価格はこの先値上がりするという期待(予想)が消費行動に結びついている。

すなわちインフレ期待が借入増(住宅ローン)と実物資産投資(不動産購入)を促進しているのである。

よって消費税増税後、日本の景気が深刻な腰折れを避けられるかどうかは、ひとえにインフレ期待を醸成し続けることが可能かどうかにかかっていると言えよう。そのカギを握るのが日銀による金融緩和政策である。これも後述する。
もうひとつ、消費税増税後の消費を落とさないためには、言うまでもなく賃金上昇が必要である。物価だけが上がって賃金が上がらず所得が増えなければ、消費に回すおカネが細るのは当然である。

これについても明るい兆しがある。日経新聞の報道によると、2013年冬のボーナスは主要34業種のうち約8割の26業種で支給額が前年を上回った。28業種で前年比プラスだった05年以来の多さで、全体で2.55%の増加だという。

問題はボーナスなどの一時金ではなく給料の賃上げである。これも良い方向に向かっている。経団連が2014年の春闘方針を示す経営労働政策委員会報告でベースアップ(ベア)を容認する方向で調整していることが報じられている。政府も経済界、労働界と政労使会議を開き、合意文書で経済界に賃上げを促す検討に入ったという。

この政労使会議というものには正直、驚きだ。政府が民間の給与に口を出すというのだから。更なる後押しもある。安倍首相は製造業を営む中小企業を対象にした現行の補助金の制度ついて「賃上げをした企業に優先的に出していく」と述べた。この制度は、革新的な製品開発に取り組む中小企業に最高1500万円を補助する「ものづくり補助金」。これまでは事業計画に基づいて企業を選んでいたが、今後は賃上げへの取り組みも参考に決めるよう運用を改める。

このような状況下、ESPフォーキャスト調査の0.8%成長で2014年度を乗り切れば株式市場にとっては上出来であろう。先進国主導でグローバル景気が改善してくるからである。いや、上出来どころではない。ベストかもしれない。外需が強く、内需はそこそこでも決して強くない。すなわちディマンド・プル型のインフレの環境にはほど遠い。そこに日銀の追加緩和のインセンティブ(あるいは口実)が生まれる余地があるからである。

PART 2 の予告あるいはイントロダクション

ここまでの議論をまとめよう。

・ 株価のリターンは企業業績の伸びに比例する。
・ 日本の上場企業の業績は世界景気に連動する。
・ 2014年の世界景気は先進国中心に改善する。

よって株価は上昇する、という三段論法である。加えて、以下の状況も株式市場の追い風となる。

・ 2014年の日本の景気は消費増税の影響で鈍化するも底堅いものとなる。
・ 一方、デフレ脱却には更なる追加緩和が必要な状況。

では株価はどのくらいの水準まで上昇するだろうか。本日の日経新聞に主要証券会社の2014年の見通しがまとめられている。それによると来年の日経平均の高値は1万8000円との予想が圧倒的に多い。現在がざっくり1万6000円だとすると、12%上昇することになる。12%というのは来期EPSの伸びに等しい。現在のところ、来期(2015年3月期)の予想EPSは今期予想に対して10%強の増益となるというのが市場のコンセンサスである。

つまり1万8000円というのは、バリュエーションが変わらないという前提のもと、利益が増える分に比例して株価が上がると言っているに過ぎない。冒頭に挙げた式(1)を思い出そう。

株価 = 業績/金利 … 式(1)

右辺分子の「業績」が1割増える見通しだから株価も1割上がります、ってそれじゃあ、誰でもできるよ、そんな予想。ストラテジストっていうのは楽な商売だと思われるだろう。

EPSの伸びに比例して株価が上がるという議論は、バリュエーションが変わらないということが暗黙の前提になっている。ではバリュエーションは変わらないのだろうか。もちろん、変わるのである。式(1)の両辺を「業績」で割ると、PERを求める式になる。

PER(株価収益率) = 株価/業績 = 1/金利

PERというのは金利の逆数。だから金利が下がれば(分母が小さくなって)バリュエーションは拡大するし、金利が上がれば(割り引く分母が大きくなって)バリュエーションは低下する。

ここで便宜的に一言で「金利」としたものは、実はリスクプレミアムや成長期待などを含む「割引率」であったことを思い出そう。さまざまな思惑でこの割引率は変化し、それに伴ってバリュエーションが変わるのである。

PART1では主に分子=業績について述べてきた。PART2では分母である金利を中心に議論する。その中核は来年の最大の投資テーマになると考える日銀の追加緩和である。それによって大きく相場展開が異なる2つのシナリオを提示する。

最後に業績の伸びについて補足しておこう。
僕はこの先、来期EPSが更に上方修正されると考えている。クィックコンセンサスによると現時点での日経平均の2015年3月期の予想EPSは1100円。1万8000円というのはPER16倍強(16.36倍)の水準だ。僕は、ざっくり1200円程度にはなると思う。そうなれば同じPER倍率で評価して日経平均は2万円になる。

信じられない?では今年の年初に書いたこのレポート「幸せなマリアージュ」をもう一度お読みください。そこには当時800円程度だった日経平均のEPSが2割程度上方修正される可能性を指摘している。5ページに載せた表の右端のEPSをご覧ください。978円とある。

本日の日経新聞がお手元にあれば市況欄で昨日のPERをご確認されたい。15.95倍だ。昨日の日経平均1万5587円を15.95で割れば977円を得る。

えーっと、今年の初めに日経平均のEPSが1000円近くになるなんてことを言っていた人間は、古今東西、僕ひとりであっただろう。
(PART2に続く)


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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