ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
山下一仁の「農業立国論」

これが世界に勝てる日本農業の底力だ
企業家的手法で農業革新に挑む先進事例

山下一仁 [キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/経済産業研究所上席研究員(非常勤)]
【第4回】 2013年12月25日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

国内市場は、高齢化と人口減少で今後さらに縮小する。これに合わせて生産すると、日本農業は安楽死するしかない。生き残るには海外市場を開拓せざるを得ないが、日本農業は国際競争力がないというのが定説となっている。だが、企業家的視点で農産物のポートフォリオを構築したり、自然条件の違いを活用して、成功しているケースが出現している。そうした先進事例を紹介しよう。

売上1億円以上の経営体だけが増加

 国内市場しか考えてこなかったコメの生産は、1994年1200万トンから800万トンに3分の1も減った。国内市場は、高齢化と人口減少で今後さらに縮小する。これに合わせて生産すると、日本農業は安楽死するしかない。それがいやなら、輸出により海外市場を開拓せざるを得ない。言い換えると、農業が発展しようとするなら、輸出できるような農業となれるかどうかがカギとなる。しかし、日本農業は国際競争力がないというのが定説となっている。農林水産省、農協、大学農学部という農業界の中心となっている人たちも、そう思い込んでいる。

 しかし、農業全体が衰退する中で、2010年に農産物販売額が1億円を超えている経営体は5577もある。これ以下の階層の経営体が軒並み減少する中で、この階層だけは5年前より9.5%も増加している(図1)。これらは、ビジネスとして農業を捉えている企業的農家である。また、輸出を開始している農家もいる。日本農業界のリーダーと言われている人たちが、農業のポテンシャルに気づかないでいる間に、農業はその先を動き始めているのだ。

 どの産業でも、収益は価格に販売量を乗じた売上高からコストを引いたものだ。したがって、収益を上げようとすれば、価格を上げるか、販売量を上げるか、コストを下げればよい。成功している農家は、このいずれかまたは複数の方法を実践している。農業関係者は農業と工業は違うとよく口にするが、どの産業でも、この経営原理は同じだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

山下一仁 [キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/経済産業研究所上席研究員(非常勤)]

東京大学法学部卒業。同博士(農学)。1977年農水省入省。同省ガット室長、農村振興局次長などを経て、2008年4月より経済産業研究所上席研究員。2010年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹。主著に『日本の農業を破壊したのは誰か―農業立国に舵を切れ』(講談社)、『企業の知恵で農業革新に挑む!―農協・減反・農地法を解体して新ビジネス創造』(ダイヤモンド社)、 『農協の大罪』(宝島社新書)、『農業ビッグバンの経済学』(日本経済新聞出版社)、『環境と貿易』(日本評論社)など。


山下一仁の「農業立国論」

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉が大詰めを迎えている。TPP反対派の一大論拠は、TPPを認めれば、日本の農業が崩壊して、食料自給率の低下を招き、食の安全が脅かされるというものだ。しかし、今の農業や農村は都会人が抱くイメージとは全く異なっている。農政や農協がこうしたイメージを活用して自らの既得権益を守ってきた結果、日本の農業は衰退の道を歩んできた。農業問題で当代随一の論客であり、農業界でも“農業ビッグバン派”のリーダ―と言われる山下一仁キヤノングローバル戦略研究所研究主幹が、農業の発展を阻害してきたこれらの要因を明らかにし、そのくびきから解き放たれれば、農業立国は可能なことを明らかにする。

「山下一仁の「農業立国論」」

⇒バックナンバー一覧