大不況や成果主義の導入で、職場の人間関係が複雑化している現在、企業には「負け組社員」が増えている。実は、負け組社員は社内で後ろ指を指されるような特別な存在ではない。その多くは、職場におけるささいな言動が原因で、不幸にも会社員人生が暗転した人々である。我々も、いつ何時負け組に転落するかわからないのだ。企業の人事・労務に詳しいジャーナリストの吉田典史氏が、最近の「負け組社員事情」と、職場の“落とし穴”から身を守るための方法を語る。

優秀な副編集長が“閑職”に
追いやられた理由とは?

吉田典史
吉田典史(よしだ・のりふみ)/ジャーナリスト。1967年、岐阜県生まれ。通信社、放送局、出版社で総理大臣経験者から浮浪者まで、1200人ほどの取材をする。2005年よりフリー。現在は、主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『週刊ダイヤモンド』『人事マネジメント』などの雑誌をはじめ、『ダイヤモンド・オンライン』『NBオンライン』などウェブメディアでも活躍。『非正社員から正社員になる!』(光文社)『年収1000万円! 稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)など著書多数。最新刊『あの日、「負け組社員」になった・・・―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方 』(ダイヤモンド社)好評発売中!(撮影/小川 光)

 最近、私の周りで「負け組社員」が生まれた。

 3ヵ月ほど前、出版社の雑誌編集部に勤務する編集者とコーヒーを飲んだ。そのとき、彼の上司である副編集長(40代前半)が異動になったことを知らされた。それは、明らかな“閑職”だった。

 実は、2年ほど前、この副編集長と3時間ほど話した。率直な印象で言えば、会社員らしくない人だった。学歴や職歴は一流、実績も同世代の中で抜きん出ている。

 だが、直感で“この人は上に上がれない”と感じた。上司こそが、部下の会社員人生を創る。この鉄則を心得ていないからだ。

 たとえば、夕方6時頃に喫茶店で打ち合わせをしたことがある。そのとき、「ここにいることを上司に報告しなくて大丈夫なの?」と聞いた。すると、ある芸能人のように「やることをやっていれば、そんなの関係ねぇ~!」という返事が返ってきた。

 さらには、上司や編集部のあり方について、大胆な批判がなされた。部外者である私が聞いていて、冷や冷やしたほどだ。数日後、私が彼のもとに電話をすると、上司が出た。