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嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え
【第2回】 2013年12月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
古賀史健

第2回
他者の期待を満たすために
生きてはいけない

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「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と語るアルフレッド・アドラー。われわれは対人関係から解放されれば、すべての悩みを消すことができる。けれども対人関係をゼロにするなど、絶対にできないだろう。そこでアドラーは、対人関係の悩みを一気に解決する具体策を提示する。いったいなぜ「すべて対人関係の悩み」なのか? そしてどうやって「対人関係の悩み」を断ち切るのか?

人は社会的な文脈においてのみ
「個人」になる

 人は誰しも、なにかしらの悩みを抱えて生きているものです。仕事がうまくいかないとか、失恋をしてしまったとか、自分の容姿が嫌いだとか、いろんな悩みがあるでしょう。こうした現実に対して、アドラー心理学では「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と考えます。あらゆる悩みは「対人関係の悩み」に還元される。個人だけで完結する悩み、いわゆる内面の悩みなどというものは存在しないのだと。

 はじめてこの考えに触れたとき、わたしは大きな違和感を覚えました。おそらく、みなさんも同じではないでしょうか。『嫌われる勇気』に登場する青年も、驚きながら反発します。

青年 いま、なんとおっしゃいました!?

哲人 何度でもくり返しましょう。「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」。これはアドラー心理学の根底に流れる概念です。もし、この世界から対人関係がなくなってしまえば、それこそ宇宙のなかにただひとりで、他者がいなくなってしまえば、あらゆる悩みも消え去ってしまうでしょう。

青年 噓だ! そんなものは学者の詭弁にすぎません!

哲人 もちろん、対人関係を消してしまうことなどできません。人間はその本質において、他者の存在を前提としている。他者から切り離されて生きることなど、原理的にありえない。「宇宙のなかにただひとりで生きることができれば」という前提が成立しえないのはおっしゃるとおりです。

 アドラー心理学では、人間は「社会的な生き物」であると考えます。

 もし仮に、われわれが「宇宙のなかにただひとり」で生きていたら、孤独は感じないでしょう。孤独を感じるのは、われわれが「ひとり」だからではなく、自分を取り巻く他者、社会、共同体があり、そこから疎外されていると実感するからこそ、孤独なのです。われわれは孤独を感じるのにも、他者を必要とします。人は社会的な文脈においてのみ、「個人」になるのです。

 そんな「社会的な生き物」だからこそ、人間の悩みはすべて対人関係の悩みである。アドラーはそう主張するわけです。もちろん、この考えを素直に受け入れる青年ではありません。彼は激しく噛みつきます。

青年 先生、それでもあなたは哲学者ですか! 人間には、対人関係なんかよりもっと高尚で、もっと大きな悩みが存在します! 幸福とはなにか、自由とはなにか、そして人生の意味とはなにか。これらはまさに古代ギリシア以来、哲学者たちが問い続けてきたテーマではありませんか!
 それがなんですって? 対人関係がすべてだと? なんと俗っぽい答えでしょう、哲学者が聞いて呆れますよ!

哲人 なるほど、もう少し具体的に説明する必要がありそうですね。

青年 ええ、説明してください! もしも先生がご自分を哲学者だとおっしゃるのであれば、ここはしっかり説明していただかなければ困ります!

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古賀史健 (こが・ふみたけ)

 

ライター/編集者。1973年福岡生まれ。1998年出版社勤務を経てフリーに。これまでに80冊以上の書籍で構成・ライティングを担当し、数多くのベストセラーを手掛ける。20代の終わりに『アドラー心理学入門』(岸見一郎著)に大きな感銘を受け、10年越しで『嫌われる勇気』の企画を実現。

 


嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え

フロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨頭とされながら、日本では無名に近いアルフレッド・アドラー。彼はトラウマの存在を否定したうえで、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、対人関係を改善する具体策を示してくれます。まさに村社会的空気のなかで対人関係に悩む日本人にこそ必要な思想と言えるでしょう。本連載では、アドラーの教えのポイントを逐次解説することでわかりやすく伝えます。

「嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え」

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