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南アフリカの指導者、ネルソン・マンデラ氏が死去
だが、マンデラは生き、ビコは死んだ【後編】

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第59回】 2013年12月27日
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 ネルソン・マンデラ氏の葬儀で、アメリカ大統領オバマ氏が弔辞を述べた際、隣にいた手話通訳者の手話がデタラメだったことが判明した。聴覚障害者団体をはじめ、世界中の批難を集めたハプニングだった。

 デタラメな手話を強引に訳すと、「段ボール」とか「魚」とやっていたとのことだ。

 葬儀後、手話を担当した黒人男性は、自分は統合失調症を患っており、大事な本番で症状が悪化、幻覚を見てしまうほどだったためにあのような手話になったと説明した。統合失調症は、しかし、どうやら本当のことらしい。

 私個人の考えとしては、南アフリカで、ましてや世界の首脳が参列した葬儀に黒人の代表者が手話で通訳を務められる時代になったことを喜びたかったが、その後の報道によると、一躍有名になったその男性は、過去に引き起こした事件――、一九九四年の婦女暴行、九五年の窃盗、九七年の強盗、そして二〇〇三年の殺人や誘拐等々の罪で訴追されたのだという。

 窃盗罪でのみ有罪判決を受けたが、その他の罪は統合失調症による精神疾患を理由に訴追は取り下げられた模様とされている。訴追は、あの男性が有名になって面が割れたか、あるいは、懲らしめ的な意味が含まれていたのかもしれない。

 だが、男が婦女暴行事件を起こした一九九四年は、南アフリカでは、ネルソン・マンデラが黒人初の大統領になった年でもあった。

 あの男性の経歴は定かではないが、映画『遠い夜明け』にあったように、アパルトヘイトが撤廃されるまで、男性は教育も受けず、黒人居住区に住み、失業と貧困のさなかに起こした犯罪だったことも充分に考えられる。

 先週は、一九七七年、三〇歳の若さで亡くなった指導者スティーブ・ビコを紹介した。マンデラの後継者と謳われた指導者は、拘束中の尋問で脳に損傷を負い、それが原因で死亡した。尋問と言うより、拷問ですね。

 ネルソン・マンデラとスティーブ・ビコには二つの共通点があった。

 ひとつは……、これはほとんどのメディアが報じないので首を傾げているのだが、二人は、非暴力主義を唱えながら、“武力闘争”を否定しなかったことだ。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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