デジタル産業経済へようこそピーター・ソンダーガード
ガートナー
シニア・
バイス・
プレジデント
リサーチ部門
最高責任者

 デジタル・ワールドが幕を開けようとしている。あらゆる予算はITに関連し、あらゆる企業はテクノロジー企業となる。すべてのビジネスリーダーはデジタルリーダーに、すべての人々はテクノロジー企業になろうとしている。

「デジタル産業経済へようこそ」

 南アフリカや日本、アメリカ、インド、オーストラリアで開催された「Gartner Symposium/ITxpo」において、私は文字どおり何百人ものCIOたちと話を交わした。その際に私が感じたことは何だろうか。それは、デジタル・ワールドの到来に対する参加者の興味の高さや、高揚感、願望に加え、誤解を恐れずに言えば多くの懸念だった。

 我々が基調講演で単刀直入に投げた質問の1つは、“デジタル”そのものへの問いだ。そもそも、デジタルとは何なのか?

 第一に、それはデジタイゼーション(digitization、デジタル変換)のことではない。デジタイゼーションは情報を「0」と「1」に変換することだ。ここでいうデジタライゼーション(digitalization、デジタル化)は、それよりもはるかに壮大な話になる。世の中のものすべてにつながる大きく、根本的にもっと重要な話だ。すなわち、読者の皆さんのビジネスを一変させる話なのだ。

 デジタルビジネスは、新たなテクノロジーを従来にはなかった手法で組み合わせることで収益と価値を生み出す。そのためには、デジタルアセットとケイパビリティが欠かせない。

 企業にとってのデジタルビジネスとは、デジタルな製品やサービス、顧客の経験が、デジタルのチャネルを介して、顧客接点を起点にバリューチェーンのすべてにおいて一貫していることを意味する。行政にとっては、住民へのデジタルなサービスによって透明性を高め、より高次な課題の達成につながることを意味している。

 デジタル化によって、ビジネスのあらゆる要素やその運営手法は、「Nexus of Forces:力の結節」(「クラウド」「モバイル」「インフォメーション」「ソーシャル」という4つのテクノロジーの強固な結び付き)や「すべてのインターネット」(Internet of Everything)と無縁ではなくなる。顧客や住民にいかに直接はたらきかけるか、工場をいかに操業するか、どうやって収益を上げるか、どうやってサービスを提供するか、これらのことに関係してくる。

 今日、どんなビジネスやサービスを提供するかに関わらず、人々はデジタル化による変革の影響を受ける。メディアやデジタルなマーケティングを通じて目にする変革は、単なる始まりにすぎない。あなたが従事する分野が第一次・第二次産業であっても、デジタル化は新たなチャンスの到来を意味する。もしあなたが公共サービスを提供する立場にあるなら、デジタル化によってこれまで以上に最適化された住民サービスが行える。