昨年12月末に全面解禁された保険の銀行窓販。おおかたの予想どおり、緩やかな船出となった。

 その全面解禁から1ヵ月後、全国信用金庫協会(全信協)が、各信用金庫に販売を推奨する6つの保険商品を選定した。

 すでにいくつかの信金で保険の販売は始まっている。だが、今回選ばれた商品は、保険料の収納代行などの事務作業を全信協が引き受けるため、信金側の負担が少なくなるといったメリットがある。

 選ばれた商品は、第三分野の医療保険とガン保険の2種類。商品を提供する保険会社は、アフラックと損保系生保の3社に加え、損保ジャパン(信金の会員向けに限定)の5社。「売り手も買い手も内容がわかりやすい商品」(関係者)が選ばれたかたちだ。

 なにより、「保険業界の信金に対する期待は大きい」(関係者)。最大の理由は“事業性融資を行なっている企業への保険販売の特例”が認められたことにある。

 都市銀行などでは、融資先に対する保険の販売は、圧力募集につながるとして認められていない。だが、「信金は会員の出資に基づく協同組織。融資先は信金の会員となるため、圧力募集の可能性は低い」(全信協)と判断された。この特例により、融資先企業に対しても、信金の渉外担当者は保険の販売ができることになった。

 もちろん無条件ではなく、枠がはめられた。医療保険では、入院給付金は1日当たり5000円まで、ガンによる入院の場合は1万円までといった具合に、上限金額が決められている。

 とはいえ「地域密着型で、訪問販売スタイルの信金の渉外担当者は、顧客が来店するのを待っている都市銀行などと違い、販売力で格段の強みがある」(関係者)。

 信金は全国に280行以上ある。店舗数は約7700店で、保険の販売資格を持つ渉外担当者は約4万人に上る。これは貸し出しが伸び悩む信金にとっては、手数料を稼ぐチャンスでもある。

 今後、大手生保の主戦場である死亡保障商品の選定も検討されており、信金の販売チャネルが生保のシェアを左右する可能性も秘めている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 藤田章夫)