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消費増税の逆風に耐える日本経済 - 村上尚己「エコノミックレポート」

来週の重要経済指標、主要企業決算についてPDF版のレポートで解説しています


日本経済は、アベノミクス発動直後2013年1月から半年間は年率約4%の高成長となり、その勢いを保ち2013年度通年で+2%台半ばの成長を実現する見通しである。3年ぶりの高成長と円安の後押しで企業業績が大きく改善したことが、アベノミクス1年目の歴史的な株高を支えた。アベノミクス2年目の2014年度日本経済はどうなるか?

2013年度と2014年度で異なる点が、景気回復を支える経済政策だ。2013年度はアベノミクス発動で、金融政策、財政政策ともに総需要を押し上げた。2014年度になると、金融緩和というアクセルを踏み続けるが、財政政策では消費増税というブレーキがかかるポリシーミックス(政策の組み合わせ)に変わる。財政政策の逆風に、日本経済が耐えられるかどうかが焦点になる。

8兆円分の消費増税決定と同時に、安倍政権は2013年末に経済対策を打ち出した。ただ、消費増税の悪影響を和らげるのは、復興特別法人税廃止の前倒し、低所得者向けの家計への給付措置など約2.5兆円と試算される。2014年度には、個人消費を中心に、少なくとも5兆円程度(GDP比約1%)に相当する規模で、経済成長率に押し下げ圧力がかかる。

このため、2014年度の個人消費は前年比-0. 5%と減少に転じると予想される(グラフ参照)。消費増税による負担は可処分所得の約3%に相当する。この増税分を、賃金や雇用の回復では相殺できないためだ。アベノミクス前半戦の景気回復を牽引した、個人消費には期待するのは難しい。


この個人消費の停滞を、他の需要項目でカバーできるか?他の需要項目の拡大で、2014年度の日本経済は大幅な失速には至らないと筆者は想定している。日本経済は、2014年度の実質GDP成長率は +1%と保ち、ゼロ成長を回避できるだろう(表参照、画像をクリックすると拡大します)。


なお10月4日レポートで、「2014年度の日本経済はゼロ成長に停滞する」との筆者の見通しをお伝えした。緊縮財政の悪影響は大きいと依然判断している。ただ、以下に説明するが、2013年後半の各種経済指標の動きなどを踏まえ、設備投資や輸出などの強さを評価し2014年度の経済予想を変更した。

2014年度に個人消費の落ち込みがあっても日本経済全体が回復を保つ一つの理由は、輸出回復に期待できることである。2014年は、世界経済を取り巻く環境については明るい点が多い。米FRBの金融緩和策は縮小に向かうが、米国を中心に世界経済は安定さを増し、景気回復を阻害するリスクは小さくなっている。

世界経済を牽引するのは米国経済だ。2014年の実質GDP成長率は3%を超えると予想される。(1)2013前半に大きく足を引っ張った緊縮財政が和らぐ、(2)家計部門のバランスシート健全化が進んでいる中で低金利政策がもたらす住宅などの総需要を押し上げる効果が強まる、ためである。

世界経済の回復に加え、2013年に20%前後進んだ円安は、日本の輸出企業の価格競争力を改善させる。円安が輸出数量を押し上げる効果は、半年から1年程度のタイムラグをもってあらわれる。それが2014年から強まることも、輸出拡大を後押しするだろう(グラフ参照)。


消費増税の逆風に日本経済が耐えられるもう一つの要因は、+2%インフレ目標を実現するまで強力に続く日本銀行の金融緩和策がもたらす、景気刺激効果が広がることである。

アベノミクス発動によって、日本経済は息を吹き返すように回復に転じた。それとともに、消費者物価でみたインフレ率も下落から上昇に転じつつある。2013年後半からは、価格上昇が幅広い品目への価格転嫁という形で進み、物価上昇の裾野が広がりをみせている。消費者物価指数には、ガソリンなどエネルギーや食品を除いた「米国式コア指数」(いわゆるコアコア指数)があるが、11月に前年比+0.6%まで上昇した(グラフ参照)。価格上昇のすそ野の広がりが、消費者物価全体を押し上げる構図が鮮明になっている。


2013年初からの消費復調に伴い、価格帯が高いモノの売れ行きが良くなり 、価格転嫁が容易になる動きが広がっていることを示している。金融政策の波及効果としての、20年ぶりに起きている家計のインフレ予想の高まりが、消費意欲を強める。消費増税で個人消費の減少は避けられないが、増税率が2%(3%→5%)だった1997年度より、2014度の個人消費の落ち込みは限定的に止まるだろう。

2013年後半から、インフレ予想の高まりが総需要を底上げするメカニズムが強まっているが、この動きは家計だけにはとどまらない。企業部門にも、インフレ見通しの変化が企業行動を変える兆しがみられ始めている。

実際に、アベノミクス発動後も、個人消費などと比べて、回復が遅れていた設備投資が2013年後半から回復に転じつつある。例えば、2013年10月鉱工業生産指数において、設備投資の動きを反映する、資本財(輸送除く)の出荷指数が前月比+9.5%と大幅に伸びた。秋口まで、2013年初と変わらない水準にあったのがジャンプアップした(グラフ参照)。


2013年初から増えた利益を設備投資に回すだけではなく、企業経営者のこれまでのデフレ予想の和らぎで、多くの企業が手元に蓄積してきた資金を設備投資として支出する行動が強まりつつあるとみられる。

こうした企業行動の前向きな動きは、幅広い企業で事業環境の好転として表れている。2013年12月調査の日本銀行による短観調査(企業に対する景況感サーベイ)において、非製造業中小企業の業況判断DIは+4と1992年以来のプラスに転じた。20年弱に及んだデフレと経済停滞を克服する道筋を日本が着実に辿っていることが、景況感改善のすそ野の広がりをもたらしている。

(1)世界経済安定を背景とした輸出拡大、(2)インフレ予想の高まりによる設備投資の回復が、個人消費の落ち込みを和らげる。脱デフレの途上にある中での消費増税という大きな逆風に、なんとか耐えるだろう。2013年度ほどの高成長は難しいが、2014年度の日本の実質GDP成長率はプラス1%を維持し、景気回復基調は保たれると予想する。企業業績は二ケタの増益となるだろう。

なお、景気回復基調は保たれるが、消費増税が及ぼすリスクへの備えから、日本銀行は消費増税導入後に追加金融緩和を行うと予想している。この点については、別の機会でご説明したい。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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