経営 X 人事
日本を元気にする経営学教室III
【第11回】 2014年1月15日
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松尾 睦 [北海道大学大学院教授]

優れたマネジャーになる・育てる(第1回)
「連携」「変革」「育成」の経験が人を伸ばす
――北海道大学大学院教授 松尾 睦 

比較的のびのびと仕事をすることができたバブル時期までは、放っておいても人材は育っていた。しかし、失敗を許さない顧客、コンプライアンス重視、成果プレッシャーなどにより、職場の空気は徐々に息苦しくなり、人々は縮こまりながら仕事をしているように思える。こうした状況の中で、優れたマネジャーに「なる」、優れたマネジャーを「育てる」ためには、人が成長するメカニズムをしっかりと理解した上で、仕事への取り組み方を再考し、育成支援の仕組みを整備する必要があるだろう。本シリーズでは、筆者が実施した調査結果に基づいて、「マネジャーは仕事を通してどのように成長するのか」、「優れたマネジャーをいかに育てるか」について考えたい。

ブラックボックス化している成長プロセス

まつお・まこと
1988年小樽商科大学商学部卒業。2004年ランカスター大学経営大学院博士課程修了。Ph.D. (in Management Learning)。神戸大学大学院経営学研究科・教授を経て現職。

 「人材開発上の課題」について調査すると、常に上位にランクされるのが「管理職の力不足」である。経営層からは「もっと力をつけてほしい」と責められ、部下からは「頼りない」とつきあげられるミドルの立場はつらい。しかし、裏を返せば、こうした非難は、ミドルマネジャーが組織の「要(かなめ)」であり、屋台骨であることを意味している。企業を訪問すると、課長が生き生きとしている会社は元気があるし、課長の目が死んでいる会社は沈滞していることが多い。つまり、会社の成長とマネジャーの成長は「同期」しているのだ。

 では、マネジャーが成長するためのカギは何だろうか。それは「経験」である。これまでの研究によれば、マネジャーの成長の7割は経験によって決まると言われている。しかし、実務だけでなく学術の世界においても「挑戦的な仕事を任せれば、管理職は育つ」というようなアバウトな考え方が支配的であり、マネジャーがいかに経験から学んでいるかについてはよくわかっていないのが現状である。

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松尾 睦 [北海道大学大学院教授]

まつお・まこと 1988年小樽商科大学商学部卒業。2004年ランカスター大学経営大学院博士課程修了。Ph.D. (in Management Learning)。神戸大学大学院経営学研究科・教授を経て現職。


日本を元気にする経営学教室III

【シリーズ「オペマネの思考法」/松尾博文】
オペレーションズ・マネジメント(オペマネ)は欧米のビジネススクールでは必須科目である。オペマネは、製造業とサービス業の事業プロセスを対象とする学問体系で、企業と組織の事業プロセスを中心に、製品、顧客、マーケティング、経営、戦略を考える科目である。本シリーズでは、オペマネの基本的な思考法を解説し、日本の製造業が陥っている問題点の解決策を、事業プロセスの見直しというオペマネの方法論から議論する。簡単な事例、極端な事例、理論と実践を取り混ぜて、論理的に考えるための糧(Food for thought)を提供することを目指す。

 

【シリーズ「カルチャー・トランスフォーメーション」/滝波純一】
企業文化は経営そのものである」というのは、1990年代に瀕死のIBMをよみがえらせたルイス・ガースナーの言葉である。多くの経営者は企業文化が業績に及ぼす影響がいかに大きいか知っている。一方で、企業文化を変革することが、いかに難しいかも、多くの人の知るところである。近年、人事・組織の領域では、日本よりも、海外の方が一歩進んでいると言わざるを得ないのだが、海外では「カルチャー・トランスフォーメーション」として、多くの企業が企業文化の変革に取り組んでおり、そこから有効な方法論も見出されつつある。事業環境が激変する中、日本企業にとっても企業文化の変革は喫緊の課題であり、海外での取組・確立されつつある方法論から学ぶべき点が多いのではないだろうか。本連載では、「カルチャー・トランスフォーメーション」について、紹介していきたい。

 

「日本を元気にする経営学教室III」

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