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アマデウスたち

手嶌 葵
祈りにも似た妖精の歌声

週刊ダイヤモンド編集部
【第32回】 2008年6月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
手嶌 葵
写真 加藤昌人

 「心を何にたとえよう、空を舞うよな悲しさを。心を何にたとえよう、雨に打たれる切なさを」――。映画「ゲド戦記」に流れた透明な歌声は、今も多くの人びとの記憶に刻まれていることだろう。

 ジャズやミュージカルを愛した両親の影響で、洋楽に出会った。幼い頃から歌詞の意味もわからぬまま口ずさみ、家族の前で披露した。食べること、寝ることと同じように、歌は生活の一部だった。

 中学生の頃、不登校になった。名前さえ聞いたことがなかった異国の歌い手たちの生涯を調べ、歌声に聴き入った。ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデー――。すでに亡きジャズの聖人たち。その歌に背中を押されるように、固く閉ざしていた心の扉が少しずつ開かれていった。

 友人たちと受けたオーディションで、初めて人前で歌った。レコード会社の目にとまり、敬愛する聖人たちのナンバーをデモCDに吹き込んだ。偶然それを聴いた映画制作スタジオのスタッフが、無名の少女に新作の主題歌、そしてヒロインの声優まで託した。予想もしなかった好運の連鎖。「本当ですか」と何度も繰り返した。

 「妖精の歌声」とたとえられるその歌声は、儚げでいて芯が強く、憂いを帯びているようで心癒やされる。どこか祈りにも似ている。誰かをそっと抱き締め、誰かを優しくゆりかごに乗せ、揺らしている。

(ジャーナリスト 田原 寛)

手嶌 葵(Aoi Teshima)●歌手。1987年生まれ。スタジオジブリの大作映画「ゲド戦記」の主題歌・挿入歌とヒロインの声優として2006年にデビュー。最新シングル「奇跡の星」は、米映画「北極のナヌー」(2007年10月公開)の日本語版主題歌。2007年12月21日、東京・浜離宮朝日ホールで初の単独ライブ開催。

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