日本の医療供給は
明らかに偏っている

 医療政策関係者の間でよく使われる図がある。それはちょうど「ワイングラス」のような形をしている。さまざまなタイプの医療施設が縦に並べられ、横幅は各タイプの医療施設の病床数を示している。

日本の医療体制は「ワイングラス構造」 <br />医に対する需給のアンバランスこそ最大の問題左側がワイングラス構造を示している。「7対1」は患者7人に対して医療スタッフ1人であることを示す(厚生労働省「中央社会保険医療協議会」資料より)

 図の上のほうは急性期の病床を示している。難しい手術などの治療を扱う病床である。それに対して、図の下にいくほど、亜急性期、慢性期、リハビリ期などの、より医療資源の集約度が低い病床を示している。ようするに、図を上にいくほど、1つの病床に関わる人材や設備などの医療資源の集約度が高くなっており、下にいくほど、その集約度が低くなっていると考えればよい。

 日本の医療の現状は、急性期など医療資源を集約的に使う病床の数が非常に多くなっている。つまり頭でっかちな形状になっており、これがちょうどワイングラスのように見えるのだ。

 急性期の病床には、多くの医師や看護師が貼り付けられている。そしてより高度な医療機器も用いることになる。ようするにコストの非常に高い病床なのだ。それに対して、慢性期やリハビリの病床は、1人の医師や少数の看護師などでより多くの患者を担当できる。高度な医療機器を大量に使うわけでもない。ようするにコストの低い病床である。

 ワイングラス構造になっているということは、日本の医療供給全体を見ると、コストの高い急性期などの病床が非常に多く、コストの安いリハビリや慢性期の病床が相対的に少ないことになる。

 こうした状態が好ましい資源配分でないことは明らかだ。高齢化が進む日本では、患者数で言えば、急性期よりも慢性期やリハビリのほうが圧倒的に多くなる。介護まで含めて考えれば、医療供給体制はワイングラス型ではなく、裾野が広く先がとがっている「富士山型」のほうが好ましい。