低迷のゲーム市場が、「ニンテンドーDS」や「Wii」の投入でにわかに活気づく中、ソフトメーカーは必ずしもその恩恵にあずかっているとはいえない。さらにベンチャーや米国メーカーとの競争にさらされ、構造転換待ったなしだ。ソフト業界の今後を追った。

 任天堂がついに「限界」を突破した。

 日本のゲームの限界普及台数は2000万台というのが、これまでの業界の定説だった。ところが、携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」は2356万台を売り上げ、今も売り上げを伸ばしている。

 岩田聡社長が「DSはゲームの流れそのものを変えた」と胸を張るように、絵に描いたようなひとり勝ちの状況にある。業績絶好調を受けて、時価総額がトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループに次ぐ3位に躍り出たのも、むべなるかなである。

 携帯型ゲームのハード市場は「ニンテンドーDS Lite」が発売された2006年を境に、飛躍的に成長。ゲーム機出荷量の7割を占めるまでに急伸したこの携帯型ゲーム機において、DSはソニーの「プレイステーション・ポータブル(PSP)」を3倍以上引き離し、6割ものシェアを握る。

 携帯型だけではない。据置型でも任天堂の「Wii」が、2007年9月中間期の出荷台数で733万台と、ソニーの「PS3」(202万台)を3倍以上も引き離した。両者は2006年の11~12月に相次いで発売されたが、Wiiの累計販売台数は1317万台に達している(PS3は同559万台)

 こうした任天堂ひとり勝ち状況が、日本のゲームソフトメーカーに波紋を投げかけないはずがない。さまざまな“地殻変動”を促しているのである。

DSのソフトに伏兵も登場

 当然のごとく巻き起こっているのは、ソフトメーカーが「勝ち馬に乗る」動きだ。PS用のソフトは、次もPSシリーズ向けというこれまでの業界慣習は、いまや崩れかかっている。

 最も象徴的なのがカプコンの「モンスターハンター3」だろう。「モンスターハンター」シリーズはPS陣営の有力ソフトで、特に2007年2月に発売された「モンスターハンターポータブル2」は、PSPタイトルとして初めてミリオンセラーを記録したほどだ。

 モンスターハンター3がPS3向けソフトとして開発されるのは、いわば既定路線と見られていたが、2006年10月10日に、任天堂Wii向けに開発することをあっさり表明したのである。