強力な“助っ人”の力を存分に生かせるか――。

 5年後の就航を目指し、小型旅客機MRJを開発中の三菱重工業。その子会社、三菱航空機は開発・販売・顧客サポート面で航空機世界最大の米ボーイングとコンサルティング契約を結んだ。

 MRJはYS-11以来の国産旅客機だけに期待が高まっている。

 国が約500億円の開発支援をしているうえ、三菱航空機には三菱商事をはじめ、トヨタ自動車、三井物産や住友商事などグループ外企業も出資。航空機製造ではライバル関係にある富士重工業が技術者派遣を決めるなど、まさに「オールジャパン体制」で臨んでいる。

 だが、世界の航空機ビジネスで戦うには力不足なのも事実だ。

 MRJは既存の同型機と比べ、2割の省エネ、大幅な騒音低下など環境性能が最大のセールスポイント。ところが、実績のなさ、海外営業やメンテナンス網などソフト面の弱さが大減点材料となっていた。

 これらはYS-11が機体は高評価されていたにもかかわらず、商業的に失敗した原因でもあり、MRJも同じ轍を踏むことを懸念する声は少なくない。

 今回、MRJはボーイングの信用力を利用して実績面の弱さをカバー。ソフト面のノウハウを吸収して、弱点を克服したい考えだ。

 もっとも、MRJの追い風となるはずだった燃料費高騰も、度を超えた原油価格上昇で、空運業界はどこも青息吐息となり、「新機種の購買意欲自体が衰退している」(瀧川洋輔・三菱航空機営業部長)。

 実際、MRJは環境性能の前評判とは裏腹に、現時点の正式受注は“身内”の全日本空輸の25機のみ。採算ラインといわれる300機にはほど遠い。

 助っ人は現れたが、苦戦は当分続きそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木 豪)