株式レポート
1月21日 18時0分
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金利上昇を想定した投資戦略 - 広木隆「ストラテジーレポート」

前々回のレポート(1月8日付け「ウィドウ・メーカーの消滅」)やその前の「甘く危険な香り」などで述べた通り、僕は長期金利が上がるだろうと予想している。では、金利上昇を想定した場合、個人にとってどのような投資戦略が考えられるだろうか。

それらのレポートの趣旨は、ようやくJGB(日本国債)のショート(空売り)が報われることになるだろう、というものだった。ならば、ストレートに国債を空売りすればよい。しかし、どうやって?長期国債の先物はある。ミニもある。通常は額面1億円が取引単位だが、ミニは1000万円とだいぶ敷居が下がる。しかし、個人で長期国債の先物取引をするひとはまずいないだろう。国債先物市場は完全に機関投資家のマーケットである。債券は価格変動が株式に比べて圧倒的に小さい。だから大きなロットで売買しないと儲からない。そんな大きなロットで売買できるのは機関投資家だけである。そもそも、国債先物の取引を個人投資家に提供している証券会社が少ないと思われる。マネックス証券では提供していない。

個人がJGBのショートに賭けるには、投信を利用するという手がある。マネックス証券では「日本債券ベアファンド(5倍型)」というファンドを提供している。これは長期国債先物の日次の価格変動の5倍反対に動くことを目指すファンドである。ブルベア型のベアファンドだから、長期国債先物の価格が上昇すればファンドの基準価額は下落し、長期国債先物が下がればファンドは値上がりするといった具合に、逆の値動きをするように設計されている。しかも、前述した通り、国債の値動きというのは小さいので、5倍のレバレッジがかかるようになっている。

但し、このファンドの難点はブルベア型のファンドだから中長期の保有に不向きだということである。僕は日本の長期金利は「そのうち」上昇するはずだ、とは思うが、ピンポイントで「いつ」上昇するかまではわからない。「いつか」は来るだろうが、「いつ」来るかはわからない。来たるべき金利上昇に備えてポジションをとるにはレバレッジがかかったブルベア型ファンドは機能しない。ブルベアファンドはもみ合いに弱いからである。

誤解している方がいるかもしれないので説明しておくと、ブルベア型ファンドの値動きが連動するのは、あくまで対象インデックスの日次リターンであり、長期には連動しない。2倍とか3倍にレバレッジがかかったタイプのファンドはなおさらである。どういうメカニズムかというと、ブルベアファンドは当日の引け値から翌日の引け値の変化率をトラックするものだから、大引けでポジションを取る。例えば2倍動くタイプのブルファンドなら、大引けでファンドの純資産の2倍、先物を買い建てる。この時、ファンドの純資産を決めるのは、資金の流出入額とその時点までの損益である。相場が上がっていれば基本的に純資産は増加し、下がっていれば純資産は減少する。だから、ブルファンドというのは上がったところでたくさん買って、下がったところではポジションを減らす超順張り型の投資になる。

相場が一本調子で動く限りは問題はないが、そんなことはありえない。上がった相場はやがて下がるし、下がったものはいつか反転する。ブルファンドは上がったところで大きく買って、下がったところでポジションを減らす。こうしたことを繰り返すものだから、ファンドの基準価額は傷み、もみ合い期間が長く続くほど、どんどん小さくなっていく。

昨年起きたような日本株の大幅上昇は、ある意味、「一本調子の相場上昇」であり、この場合ではブルファンドは設計された通りインデックスの上昇率の2倍3倍上がっているが、例外だと思ったほうがいい。ブルベアファンドというのは、あくまで短期勝負の商品である。
では発想を変えて個人向け国債の変動金利型を購入するか。これなら金利上昇にも耐えられる。しかし、この水準で国債を買っても意味はない(それこそ機関投資家並みに何十億円もキャッシュがあるなら話は別だが)。そもそも、金利が上がるというのは、どのくらいの上昇幅を見込んでいる話なのかというと、現在の10年債利回り0.7%が1.5%になればいいところだろうと考えている。

確かに倍増には違いないが、幅にすれば80bps(ベーシスポイント)の上昇である。仮に一本調子に80bps金利が上昇すると仮定して、先ほどの「日本債券ベアファンド(5倍型)」でどれくらいのリターンが見込まれるか、ラフに計算すると3割弱である。5倍のレバレッジをかけて、現在の水準から債券利回りが倍になっても3割弱のリターンだ。いかに債券というのが大規模ロットでポジションを張る機関投資家のものであるかが分かるだろう。

では個人投資家が金利上昇に備えるにはどのような投資戦略が有効なのだろう。そのひとつが生保株への投資である。2013年5月15日付レポート「上昇相場第 2 幕 ここから本当のグレート・ローテーションが始まる - 長期金利の上昇で最も買われる株は何か?」で述べたことであるが、未読の方はぜひお目通しいただきたい。

生保の株価はEV(エンベディッド・バリュー)というものでその理論的価値が与えられる。このコンセプトを完全に理解するのは難しいが、ポイントだけ簡潔に述べると以下の通り。

生保は長期の負債を抱えている。契約者が死亡したら保険金を支払うという負債である。一般論ではひとの寿命は長い。だから生保の負債も長期的なものである。これに対して資産はそこまで長い期間の資産を持てない。国債ポートフォリオの残存期間を延ばすのも、超長期債の流動性や金利リスクなどを考慮すると限界がある。満期というものがない株式への投資にもさまざまな制約がある。こうしたことから、生保の資産と負債の期間(これをデュレーションという)にミスマッチが生じている。

理論株価であるEVは資産・負債とも現在価値に割り引いて算出する。よって金利が上昇すれば長期の負債も大きく割り引かれて債務額が小さくなる(よってEVが上昇)。反対に金利が低下すれば長期負債の割引現在価値が大きくなる(よってEVは低下)。長期の負債の割引現在価値が問題になるのである。




昨年4月4日、日銀が異次元緩和を発表し金利が急低下したとき、生保株だけ逆行安となったことは既に述べた。それはこうしたメカニズムが意識されたからに他ならないが、その時、最も下落率が大きかったのがソニーFHである。他社の負債デュレーションは15〜20年未満だがソニーFHは30年の負債デュレーションを持つ(2013年3月末時点)。金利低下による負債の現在価値増大が最も大きいことを反映したものだろう。ということは、金利上昇時はその逆のことが起きるはずである。長期金利が上昇する局面では長いデュレーションの負債を抱えたSFHが最も恩恵を受けるだろう。

金利上昇時に恩恵を受ける、もうひとつのセクターは三菱UFJ、三井住友FG、みずほFGなどメガバンクを中心とした大手銀行株である。2013年9月30日付レポート「今年度下半期の日本株相場とメガバンクの復活」で書いた通りである。銀行株こそがアベノミクス相場の本命であるとも述べた。これについては、近々またアップデートのレポートを出すつもりでいるのでお待ちください。




(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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