第三者団体には伝えられない真実の思いを伝えたい

開沼 他方で、死刑にしてもらわないと救われないという思いを持っている人もいると。

大山 そうですね、少なからずあるとは思います。むしろ、そういう人のほうが多いのかもしれません。でも、名古屋の原田さんとか、僕と同じような思いをしている人もいます。親族間の殺人ではなくても、死刑囚の顔を見て気持ちが変わったと言っている人がいるので、全員が全員そうは思っていないこともたしかです。そういうことを僕が伝えていけばいいのかなと。ただ、死刑廃止を訴える団体には入りたくありません。

開沼 入ってくれるように頼まれませんか?

大山 講演活動に呼ばれたことはあります。

開沼 当事者だけではなく、支援団体のような組織が死刑の周辺問題や裁判員制度の問題を扱っていますよね。そうした団体との距離感は、見極めながらやっている?

大山 呼ばれたら行くことはありますけど、いまの段階ではそれ以上のことはしません。ある弁護士会でパネルディスカッションをしたこともありましたが、死刑についての意見交換、いい経験ができたなと思いながら、茶番だったかなという気持ちが正直あります。

 なんだろうな、汚い言い方をしたらあれですけど、金のためにはしたくないというのがあるんですよね。そういう団体に行けば、どっかで金を儲けるヤツがいて、その金があるから活動できるわけですよね。僕も金持ちではありませんから交通費はいただきますけど、講演では基本的に謝礼をいただいていません。金の話が出てくるのがいやで、そういう団体には属さないというのはありますよね。

 うわべだけなんじゃないか、という気持ちもないことはないですけど、かといって、やっていることを否定はしません。本当に立派なことをされているなとも思います。ただ、僕は1人でやっていたほうが気が楽で、自分がやりたいことをできるかなと。

開沼 裁判員制度を変えるぞ、法律をこうするぞという動きと、当事者が抱える複雑な思いにズレがあるわけですね。

大山 死刑廃止の弁護士団体の話を聞いたこともありますが、言葉を難しくしすぎているので、第三者が聞いてもわからないと思います。勉強した人がそれに基づいてしっかりとした意見を述べているとは見えるんですけど、実際にふたを開けてみたら、難しい言葉が使ってあるだけです。あの話を聞いても身近な問題としては考えられないし、考えるきっかけいにしろというのが無理だと思いますよ。

開沼 死刑囚に会うことはその解消につながりますか?

大山 会えばいいという話にはならないと思いますが、経験したことを生々しく語ったほうがきっかけにはなると思います。