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相反する検査で銀行を追い詰める金融行政の迷走

週刊ダイヤモンド編集部
2009年4月16日
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 金融行政の定まらない姿勢が、金融機関の困惑を生んでいる。 

 2月23日、金融庁はみずほコーポレート銀行(CB)の金融検査に入った。これは定期的に実施されている通常検査。昨年までの検査では銀行の業績が良かったこともあって、融資先に関する指摘はほとんどなかったが、今回は大きく違った。

 関係者によれば、運輸大手やノンバンク大手など、複数の大企業向け融資に関して軒並み指摘を受け、貸倒引当金の大幅な積み増しを迫られたという。

 現在も検査は継続しており、まだ最終的な結果は不明だが、引当金の積み増しは総額でなんと2000億円近くにまで達する見通しだというからいかにも大きい。

 「名だたる大企業も大幅に業績が悪化しているから指摘されるのもわかるが、それにしても額が尋常ではない」と、他の大手銀行幹部も驚きを隠さない。

 あわせて、みずほフィナンシャルグループは、昨年出資した米メリルリンチに関する減損処理なども行う意向で、2009年3月期決算は大幅な赤字が不可避な状況にまで追い込まれている。

 ところがである。こうした検査を行う一方で、金融庁は4月6日からいわゆる「貸し渋り」や「貸しはがし」に関する新たな集中検査にも着手し始めた。

 これは、合理的な理由もなく特定の業種に対する融資を抑えたり、財務状況が一時的に悪化しただけで融資を早期に回収したりしていないか点検するもの。メガバンクなど大手9行のほか、融資先などから苦情の多い地方銀行や信用金庫といった地域金融機関20前後を対象にする考えだ。

 もとはといえば、中小企業に対する円滑な資金供給が目的だったが、金融庁が大企業や中堅企業に対する融資も含める方針を示したことで事態が変わる。「貸すな」と言いながら、返す刀で「貸せ」と言っていることに他ならないからだ。「一体、どうしろと言うのか、金融庁の考えがわからない」と関係者がこぼすのも無理はない。

 一部には、「金融庁は公的資金の受け入れを求めている」との指摘がある。引当金の積み増しで資本が減少、融資に回す事ができないだろうから、ならば公的資金を受け入れろというロジックだ。

 金融機能強化法を復活させ、しかも資金枠を12兆円まで拡大させたにもかかわらず、公的資金注入を申請する金融機関がわずか3行にとどまっているからだ。

 こうした事情を察してか、三井住友フィナンシャルグループは、8000億円にものぼる自力増資を実施すると発表。「公的資金は必要ないとの意思表示」(金融関係者)と受け止められている。

 果たして金融庁の思惑はどこにあるのか。金融関係者は疑心暗鬼の思いを深めている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田島靖久)

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