国内外で固まりつつある
習近平政権の“悪くない”評価

 前回コラム(2014年の中国政治動向を占う 習近平の“改革”は進むのか)では、2013年12月30日に開催された政治局会議において、習近平国家主席が《全面深化改革領導小組》(全面的に改革を深化させるための領導班組織)の“組長”に就任することが決定された事実を紹介した。

 “改革小組”は、李克強首相による“李コノミクス”(中国語で“李克強経済学”)などに象徴されるような経済改革だけでなく、長年“聖域”として手がつけられないでいる政治改革をも対象にしているようだ。現役政治家のなかでは、党・政府・軍内で最大の権力基盤を誇る習近平氏が組長を兼任する事実は、「政治改革を通じて経済改革を促進する」というアプローチがなされる可能性という意味で、ポジティブであると述べた。

 中国が旧正月(春節)を間近に控えたこの時期、私も欧米、日本、そして中国本土や香港、台湾、シンガポールなどの識者たちと、「習近平の改革をどう見るか?」をめぐって議論を重ねてきたが、「習近平は胡錦濤よりも期待できる」、「習近平は本気で改革をやろうとしている」、「習近平は自らの任期で改革が進まないと中国がまずい方向に進んでしまうことを理解しているし、祖国を救うために一石を投じる覚悟を持っている」などといったポジティブな見方をする方が多かった。

 本連載でもレビューしてきたように、三中全会で「資源配置の過程で市場が決定的な役割を果たす」ことを公式ドキュメントに明記するといった、新たな政策動向に対して前向きな評価を与える中国国内の政治ウォッチャーや経済学者、ビジネスマンは後を絶たない。

 胡錦濤・温家宝時代に実質的な構造改革が進まなかったことに対するリバウンドだという見方もできるが、習近平・李克強政権のスタートダッシュに関して、(外交政策で防空識別圏を設定するなど対外拡張的な動きは懸念されるとはいうものの)内政面では概ね“悪くない”評価が中国国内・国際社会の主流と見ていいだろう。

 そういう評価が広がる過程におけるひとつの根拠が、“改革小組”の存在である。この存在をめぐってポイントとなるのは、“改革小組”は決して中央政府の産物にとどまらないという点だ。習近平氏は「改革を、統率力をもって、効率的に、力強く推し進めるための」このメカニズムを、地方改革にも応用すべく全国各地に指示を出している。