経営 X 人事
日本を元気にする経営学教室III
【第12回】 2014年1月29日
著者・コラム紹介 バックナンバー
松尾 睦 [北海道大学大学院教授]

優れたマネジャーになる・育てる(第2回)
良質な経験の連鎖に入るカギは何か
――北海道大学大学院教授 松尾 睦

シリーズ1回目では、マネジャーが「連携」「変革」「育成」という3つの経験から、「情報分析力」「事業実行力」「目標共有力」という3つの能力を身につけていることがわかった。つまり、「連携」「変革」「育成」の3つは、マネジャーが「一皮むける」ために必要な経験なのだ。
2回目の本稿では、いかにすれば「連携」「変革」「育成」の経験を積むことができるのかについて考えたい。

何が経験を決めるのか

 経験は偶然で決まるとよく言われるが、偶然だけですべてが決まるわけではない。経験に影響を与えている要因として私が想定したのは、次のとおりである。

・過去の経験
・過去に獲得した能力
・仕事の姿勢(目標の性質)
・上司からの支援

 まず、過去に特定の経験を積んでいれば、その後もその経験が積みやすくなると予想した。なぜなら、1回経験すれば、その経験が何をもたらすのかがわかるし、そこで知り合った人々との関係もできるからである。

 また、能力が高い人ほど、チャレンジングな経験に巡り会う可能性も高くなると考えた。優秀な人に仕事が集まることを考えると、能力の高さは良質な経験を積む条件の一つになるだろう。

 さらに、本人がどのような姿勢で仕事をしているのか、どのような目標を目指して仕事をしているのかも、経験に影響を与えると思われる。仕事の姿勢としては、好奇心・挑戦・独自性などを重視する「学習志向」と、成果を上げることを重視する「業績志向」の2タイプを測定した。

 そして欠かせないのが、仕事に対して影響力を持つ上司からのサポートである。上司の支援としては、アドバイス等を与える「直接指導」、仕事を任せる「権限委譲」、社内外のキーパーソンとの対話の機会を提供する「対話機会」の3つを想定した。

経営 X 人事 特集TOPに戻る

 

 

松尾 睦 [北海道大学大学院教授]

まつお・まこと 1988年小樽商科大学商学部卒業。2004年ランカスター大学経営大学院博士課程修了。Ph.D. (in Management Learning)。神戸大学大学院経営学研究科・教授を経て現職。


日本を元気にする経営学教室III

【シリーズ「オペマネの思考法」/松尾博文】
オペレーションズ・マネジメント(オペマネ)は欧米のビジネススクールでは必須科目である。オペマネは、製造業とサービス業の事業プロセスを対象とする学問体系で、企業と組織の事業プロセスを中心に、製品、顧客、マーケティング、経営、戦略を考える科目である。本シリーズでは、オペマネの基本的な思考法を解説し、日本の製造業が陥っている問題点の解決策を、事業プロセスの見直しというオペマネの方法論から議論する。簡単な事例、極端な事例、理論と実践を取り混ぜて、論理的に考えるための糧(Food for thought)を提供することを目指す。

 

【シリーズ「カルチャー・トランスフォーメーション」/滝波純一】
企業文化は経営そのものである」というのは、1990年代に瀕死のIBMをよみがえらせたルイス・ガースナーの言葉である。多くの経営者は企業文化が業績に及ぼす影響がいかに大きいか知っている。一方で、企業文化を変革することが、いかに難しいかも、多くの人の知るところである。近年、人事・組織の領域では、日本よりも、海外の方が一歩進んでいると言わざるを得ないのだが、海外では「カルチャー・トランスフォーメーション」として、多くの企業が企業文化の変革に取り組んでおり、そこから有効な方法論も見出されつつある。事業環境が激変する中、日本企業にとっても企業文化の変革は喫緊の課題であり、海外での取組・確立されつつある方法論から学ぶべき点が多いのではないだろうか。本連載では、「カルチャー・トランスフォーメーション」について、紹介していきたい。

 

「日本を元気にする経営学教室III」

⇒バックナンバー一覧