ある部長は、これまでの仕事の仕方を振り返って、次のように述べている。

「本質的な改善や改革に、逃げることなく取り組みました。短期的に結果が出るものではありませんが、それが将来の会社を支えていくものですから。ただし、仕事は難しくやるのではなく、自分なりのアイデアを出して、周りのメンバーを巻き込んで、楽しく進めていきたいと思っています」

 こうしたコメントにあるように、学習志向が強い人は、普段の行動や発言を通して、独自のオーラを放っているのであろう。学習志向は、自身の仕事を方向づけるだけでなく、「あの人とだったら一緒に仕事をしてみたい」と感じさせるマグネットの役割を果たしていると考えられる。

 なお、成果を上げることを重視する「成果志向」が強い人は、「部下を育成する経験」を多く積んでいた。これは、部門のパフォーマンスを上げるためには、自分だけが頑張っても限界があり、部下の力を伸ばす必要があるからだろう。

経験の連鎖に入る第2のカギ:上位者との対話機会

経験の好循環に入る第2のカギは、上司による「社内外のキーパーソンとの対話機会の提供」であった。つまり、普段会うことが難しい社内の上位者や社外の有識者と対話する機会を与えられている人ほど、連携や変革の経験を積んでいたのである。意外なことに、仕事を任せる「権限委譲」や、励ましやアドバイスを与える「直接指導」は、経験に大きな影響を与えていなかった。

 ある部長は、担当者時代を振り返って次のように述べている。

「社内のいろいろな方と対話する場を提供いただいたことで、多くの課長さんや部長さんと直接話すことができるようになりました。そのおかげで、部署間で共同推進するような業務テーマを自分で発掘して、企画して進める事ができました。また、社内の各種プロジェクト活動にも参画させてもらいました」