なお、社内の上位者を紹介してもらうケースだけでなく、社外の人脈づくりも重要である。連携や変革を多く経験しているあるマネジャーは「係長時代から、競合会社の役員クラスと直接交渉する機会を与えてもらったこと」が、その後の部門連携や変革プロジェクトの参加につながったことを報告している。対話によって人と人のつながりを広げることが、連携や変革の経験を積むキッカケになるのである。

良質な経験を決定する3つの要因

 これまでの内容を要約しよう。良質の経験を決定する要因は次の3点である。

①類似した過去の経験
②好奇心・挑戦・独自性を重んじる「学習志向」
③社内外のキーパーソンと対話する機会

 これらをまとめると、経験の決定プロセスは下図のように表わすことができる。まず、できるだけ早い時期に経験の好循環に入ることが重要になる。この好循環に入るカギは、単に短期的な成果を追い求めるだけでなく、好奇心や挑戦心を持って仕事をすることと、社内外のキーパーソンと話をする機会を上司やメンターから提供してもらうよう働きかけることである。つまり、マネジャー本人の仕事の姿勢と、周囲のサポートが組み合わさることで、良質な経験の連鎖の中に入ることができるといえる。

 次回は、上述した発見をベースにして「企業におけるマネジャーの経験学習をいかに支援すべきか」について、具体的なマネジメントのあり方を考えたい。

優れたマネジャーになる・育てる(第2回) <br />良質な経験の連鎖に入るカギは何か<br />――北海道大学大学院教授 松尾 睦

(編集部からのお知らせ)
 本稿についてより深く知りたい方は、松尾睦著『成長する管理職:優れたマネジャーはいかに経験から学んでいるのか?』(東洋経済新報社)も参照してください。