政府と民営・日本郵政グループが目指してきた同グループ3社(日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命)の早期上場(2010年度の株式上場を指す)に濃い暗雲が漂ってきたことが、初めて明らかになった。

 東京証券取引所の幹部が筆者の取材に応じ、ビジネスモデルの確立とガバナンスの整備という上場に不可欠な2つの条件について、「現時点では、両方とも、求められる水準に達していると考えにくい」と断言したからだ。

 上場は、日本郵政の西川善文社長が繰り返し表明してきた民営・日本郵政の最大の経営目標のひとつ。これまで各年度の事業計画などでも経営の目標に掲げて、歴代総務大臣らのお墨付きを得てきた経緯がある。

 ところが、今回の取材で、抜本策を講じないと、2010年度の早期上場どころか、2011年度としてきた上場のデッドラインにも間に合わない現実も浮き彫りになった。

 西川社長は経営責任を問われることになりそうだ。

郵政民営化法では
早期の政府株放出を定めるが

 小泉純一郎政権(当時)は2007年10月、国営事業だった日本郵政を「民営化」した。だが、それはあくまでも名目上のことに過ぎない。正確に言うと、それまで公社だった日本郵政を株式会社化したに過ぎず、その株式は現在もすべて日本政府(名義上は財務大臣)が保有している。つまり、日本郵政の実態は日本政府が100%出資する特殊会社(100%国営株式会社)に過ぎないのだ。

 そこで、本当の意味での民営化を完成するには、この株式の民間への放出と、その株式の流通性を高めて幅広く売買し易くするための株式の取引所への上場が重要な課題となっている。

 ちなみに、この政府保有の日本郵政株の放出と、日本郵政保有のゆうちょ銀行、かんぽ生命の金融子会社2社株の放出について規定しているのは、郵政民営化法だ。同法は、第7条で、日本郵政株の3分の1を残して、それ以外を「できる限り早期に、減ずるものとする」と定めている。

 また、同条の第2項は、日本郵政が保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式について、「完全民営化への移行期間」(平成19年10月1日から平成29年9月30日までの間)に「すべて処分する」と規定している。

 一方、西川社長が率いていた民営化の準備会社「日本郵政株式会社」は2007年4月、日本郵政公社から、その業務を引き継ぐ「実施計画」(承継計画とも言う)を政府に申請。同年9月10日に、これに関する認可を受けた。