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1月29日 18時0分
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円安基調が一服するシナリオ - 村上尚己「エコノミックレポート」

先週末以降、為替市場では急激な円高が進んだが落ち着きつつある。大幅な円高は、新興国の通貨急落に起因する米国株急落や長期金利低下と同時に起きた。そして新興国発の混乱には、米FRBへのテーパリングへの思惑が影響している面もある(1月27日レポート)。ただタイミングは分からないがこの混乱は長期化せず、収束に向かうとみられる。

新興国発の混乱が収まるとすれば、為替市場の注目は米国・日本のファンダメンタルズに移り、日米の金融政策を材料にドル円相場は動くだろう。金融政策については、米FRBがテーパリング(量的金融緩和縮小)を進める一方で、日本銀行は+2%インフレ目標実現に向けて金融緩和強化を続ける。

こうした米国と日本の金融政策のスタンスの違いを背景に、為替市場ではドル高円安トレンドが続くとの見方が多い。筆者自身も同様の見通しを持っている。1ドル100円台前半であれば、購買力平価で算出されるドル円との比較で、「円安過ぎる」水準ではない(12月26日レポート)。


米国と日本の金融政策の違いがドル円市場で主たる材料になれば、購買力平価の基準で「ドル高」が進み1ドル110円を超える円安が進むシナリオも想定できる。そして、米FRBのテーパリングに加えて、日本銀行がどのタイミングで追加金融緩和を実施するか、が重要になる。筆者は現段階で、4-6月期に日本銀行が追加金融緩和を行うと予想している。

昨年末までに、日本銀行が今年3月までに、金融緩和に踏み切るとのシナリオが頻繁に聞かれた。ただ、景気指標改善が続く中で、「市場への配慮」だけで日本銀行が追加金融緩和を行う可能性は小さく、仮にこのシナリオが実現すればサプライズになると考えた(もちろん、このシナリオの可能性も残っている)。

より可能性が高いシナリオとして、2014年4月以降の消費増税による景気落ち込みリスクへの対処として、4-6月のいずれかのタイミングで金融緩和を行うシナリオを想定した。4月以降の景気減速を和らげるために、追加金融緩和を繰り出し、2015年度にかけて+2%程度のインフレ率を達成する確率を高めることができる。

黒田日銀総裁は、「上下双方向のリスクが顕在化すれば、躊躇なく調整を行う」と繰り返し述べている。消費増税による個人消費の大幅減少は、「下方向」のリスクである。+2%のインフレ目標実現が遠のく可能性を含め、景気が減速する4-6月中に金融緩和が想定される。

昨年末の市場参加者への調査では7割以上が2014年までの6月までの金融緩和を想定しており、筆者の想定はほぼコンセンサスに近かった。ただ、黒田日銀総裁は消費増税に関して、ダボス会議の場で「日本経済は消費増税後も1%台半ばの成長が続く」という見通しとともに、「追加的な問題は生じない」と発言した(時事通信社)。消費増税後の経済動向について、依然かなり強い自信を持っている。

また、11月分の消費者物価指数(生鮮食品除くコア)は、12月27日レポートで紹介したとおり、前年比+1.2%と、日本銀行による2014年度の想定に近い上昇を示している。消費者物価の伸びは1-3月に更に上昇する可能性が高い。日本銀行が4月末に公表する展望レポートで、インフレ見通しを引き下げる可能性は低くなっている。日本銀行が金融経済月報で示しているとおり、+1%台前半のインフレ率が続く可能性が高まっている。

これらを踏まえると、消費増税をきっかけに4-6月に景気指標が大きく悪化しても、それが「先行きのインフレ率低下に繋がらない」と日本銀行が判断する可能性がある。そうなると、日本銀行による追加金融緩和は、筆者が想定する4-6月より大きく後ずれし、秋口まで経済・インフレ指標の動向を見定めた上で、金融緩和の判断を行う可能性がある。

日本銀行の追加金融緩和なしに、景気回復が続きインフレ率が+2%に近づくシナリオも十分想定できるだろう。日本経済は消費増税の大きな逆風になんとか持ち堪えると考えている。ただ、消費増税という緊縮財政政策を行う中で、追加金融緩和で景気回復を支える、という政策の組み合わせが、デフレ脱却を最優先とする対応と思われる(追加の財政刺激策が実現する可能性もあるが)。

現段階ではリスクシナリオだが、日本銀行による追加金融緩和が先送りされるとの思惑で、春先にかけて高まる可能性がある。こうした思惑を背景に、2013年秋口から続いてきた円安ドル高が一服する場面があるかもしれない。

もちろん、仮に日本銀行の追加金融緩和策が先送りとなっても、+2%のインフレの安定的な実現に向けて、日本銀行による量的金融緩和政策は長期化する可能性が高い。2015年以降も超低金利政策は続くだろう。政策金利の引き上げを含めた「金融政策の出口」に近いのは米FRBである。米FRBによるテーパリングがスムーズに続くなら、2014年を見通せばドル高円安トレンドは変わらないだろう。この流れが、日本銀行の政策への思惑で揺れる場面がありうる、ということである。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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