株式レポート
2月3日 18時0分
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市場は常に行き過ぎる - 広木隆「ストラテジーレポート」

すみません、すでに下値で買ってます

前回のレポートでは、「日経平均1万5000円割れは買い場である。但し、一度に全部買わずに何回かに分けて、ここから買い下がる方針で臨みたい」と述べた。そのスタンスに変更はない。事実、今日は個別銘柄を買おうと思って申請書を準備した。こういう商売をしていると、自分自身の個人口座での株式投資には制限がいろいろあって面倒なのだ。それでいままではインデックスファンドへの投資を中心に行ってきたが(投信は比較的自由に売買できる)、今日は面倒な手続きを申請しても個別株に投資する局面だと思ったのである。そうしたら益嶋が、こう言うのである。
「広木さん、まずいんじゃないですか?自分で先に仕込んでおいて、それからレポートで推奨したりしたら」
「俺がレポートでちょっと書いたくらいじゃ、びくともしないような大型の株だぞ。別に大丈夫だよ」
とは言ったものの、やはり、それもそうだと思い直して、まず先にレポートでその旨を告げておこうと考えた。

前回のレポートで、「僕はこの下げを買う」と買いたら、読者から投稿が来た。

<そんなこと言ったって何をいくらでどれだけ買ったか証拠を見せてくれなきゃ意味ないじゃん>

なぜ僕個人の投資行動の明細を公衆の面前で明らかにしなければならないのか?自分で「ここで買う(買った)」とか書いているストラテジストなど僕のほかに一人もいないだろう。それだけでも過剰サービスなのだ。

こういう投稿もあった。
<お客には「買え買え」と前から勧めていながら、自分はまだ買っていなかったのですか?>

すみません。とっくに買っています。この相場の底から買い上がってきています。投資金額を見せると、一般の個人投資家は腰を抜かすだろうから、そこは伏せるとして、持ち値だけを見せるとこんな具合である。



つまり現状より2割下のコストだ。いろんなところで買ったり売ったりしているが、今でも2割の含み益をキープしてポジションを保有中である。

オーバーシュートは絶好の投資チャンス
マーケットは上にも下にも行き過ぎる。それは相場の常である。そうした市場のオーバーシュート(行き過ぎ)は投資家心理の楽観と悲観が極まることで起きる。そして、そうしたオーバーシュートの局面が絶好の投資チャンスであったということはまた歴史が証明している。

今の日本株は売られ過ぎであると思う。「企業の7割 増収増益」という記事が日経新聞の1面トップを飾る状況でありながら、その好業績を評価せずに「新興国不安」という掴みどころのない「獏とした不安」に振り回されている。

新興国不安はどのような形で収束するのだろうか。収束するには2つの経路がある。ひとつは新興国通貨が売られる材料になっている経常赤字が改善すること。通貨安になって輸入インフレが高まれば外国からモノが買えなくなるので、貿易赤字は減る。国内は窮乏するだろうが、とにかく輸入は落ちざるを得ない一方、通貨安で輸出も多少は伸びるだろうから貿易収支は改善するだろう。但し、そうしたファンダメンタルズの改善には時間がかかる。

もうひとつの収束の経路は、この新興国の通貨安に先進国市場が振り回されなくなることである。新興国不安が後退して先進国市場が落ち着く - のではない。順序が逆である。逆説的な言い方になるが、先進国の株式市場が落ち着くことで新興国不安が後退する。なぜなら、今起きている新興国通貨安は、年初からの先進国市場の調整ムード(=リスクオフの地合い)を利用した投機だからである。これは欧州債務危機の時に南欧国債が売り込まれた構図と同じである。当時は米国が債務問題を抱え経済指標もまだら模様で世界的に株式は軟調であった。リスクオフ・ムードが支配的な相場環境では「弱い者いじめ」がうまく機能する。不安心理の増幅で「同調者」が現れるからだ。ところが先進国の経済や市場が明るさを取り戻すと、重箱の隅をつつくような投機売りはもう注目されなくなる。

直近の例を挙げれば昨年12月にFRBがテーパリングを決めたとき、米国は雇用統計が改善し株価も高値追いが続いた。もしも米国のテーパリングが新興国不安の根本的要因であるならば、初めてテーパリングが決まったときにこそ市場の動揺が起きておかしくなかったはずである。ところがそのときは米国市場が頑強だったため、今回のような動揺は起きず、年が明けて寒波の影響などで米国の指標が弱含むなか、株式市場とドルが調整に入ると今回のような新興国通貨売りが騒ぎ立てられるようになったのである。この間、ずっとトルコ・リラは売られてきたにもかかわらず、である。



米国市場は新興国リスクを織り込み済み
そして米国株式市場はそろそろいいところに来ていると考える。今朝の「マーケットメール」に書いたコメントをここに再掲しよう。

<ダウ平均は1万5500ドル付近にある200日移動平均に接近してきました。昨年9月から10月にかけての下落局面では200日線にサポートされて切り返した経緯があり、今回も下値目途となるでしょう。またS&P500は100日移動平均を下値支持線として推移しており、その観点からはほぼ下値圏に達していると思われます。

新興国不安で株式市場が下げたと言われますが、米国株式市場は新興国不安をほぼ織り込み済みではないかと思われます。たとえば新興国の状況が何ひとつ変わっていなくても先週木曜日には米国のGDP統計を好感して大幅高となりました。先週末は下落しましたが、それは上述したように企業業績を嫌気したものです。もうひとつ、新興国不安を乗り越えたと思われる証左を挙げれば、この日はキャタピラー(CAT)が買われて上昇しました。建設機械大手のキャタピラーは新興国リスクにもっとも敏感な銘柄です。事実、アルゼンチン・ペソの急落で市場が大幅安となった1月24日にはキャタピラーも急落しました。しかしその後株価は持ち直し、先週末は93ドル91セントで終えました。これは昨年2月下旬以来、ほぼ1年ぶりの高値です。新興国リスクが本当に株式市場の悪材料なら、キャタピラーの株価が1年ぶり高値にまで買われるわけがありません>



同じことは非鉄大手アルコア(AA)についても言える。アルミ市況が中国をはじめとする新興国の需要に左右されることは言うまでもないが、アルコアの株は2011年9月以来の高値水準にある。もしも新興国経済が真剣に懸念されているなら、キャタピラーやアルコアの株価がこんな高値水準にあることの説明がつかないではないか。

日本株の割安度
日本株がいかに割安か、その一例を示そう。先日、トヨタ(7203)の営業利益が6年ぶりに最高益更新と報じられた。しかし、市場のコンセンサスは新聞の観測記事よりもっと高水準の利益を見込んでいたため、サプライズとならず、株価は無反応。いや、無反応どころか6,000円の大台割れである。

前回トヨタが最高益を達成したのは2008年3月期。その時のEPS(1株当たり利益)は540円だった。株価は2007年2月に8,350円の最高値をつけている。株価というものは1年先の業績を織り込むものだから、1年後の最高益を織り込んで株価も最高値をつけたのである。その時のバリュエーションはPERで8,350円÷540円=15倍である。

現在、2014年3月期のトヨタの予想EPSは541円。市場並みのバリュエーションで評価してやれば8,350円の過去最高値がついていていい。逆に言えば、それだけ現在の株価は割安感がある。今日の終値5,831円はクイック・コンセンサスの予想PERで10.9倍である。

来期2015/3月期の予想EPSは580円。7%増益とは控えめ過ぎる。ざっくり言って、600円にはなるだろう。5月のゴールデン・ウィーク明けの決算発表時にはトヨタの来期EPS600円がコンセンサスになっているだろう。市場並みのPER15倍で評価して9,000円である。

今日の昼のオンライン放送でこの話をしたら、「いまさらトヨタか。つまらない」というフィードバックがあった。いかにも。銘柄としてはつまらない。東証最大の時価総額を誇る、日本の製造業のトップメーカーである。誰でも知っていて、誰もが持っている株だ。ところが、それだけの超大型株で50%のリターンが期待できる。EPS600円×PER15倍 = 9,000円はかなりの蓋然性があると思う。無理のないストーリーだ。6,000円割れを買って、9,000円まで持てば5割獲れる。トヨタのような固い銘柄で5割獲れたら、つまらなくないじゃないですか!(あれ?つまらない?つまらなくなくない?どっちだっけ?)

来期予想PERで10倍以下、なんて銘柄がごろごろしている。大手自動車はトヨタに限らず日産自(7201)、ホンダ(7267)、マツダ(7261)など軒並み10倍以下。富士重(7270)のような好業績銘柄でさえも今日の終値2,754円はクイック・コンセンサスの来期EPS(306円)をもとにすればPER9倍割れである。ましてこれも言わずもがなだが、富士重は北米中心で新興国リスクとは無縁である。

自動車以外でも新日鉄住金(5401)、JFE(5411)、ブリヂストン(5108)、商船三井(9104)なども来期予想PERで10倍以下である。

そうしたグローバル景気敏感は為替や新興国リスクがある、という向きには内需企業はどうだろう。みずほ(8411)、三井住友(8316)、三菱UFJ(8306)のメガバンク、そろって10倍以下だ。

JR東海(9022)のような好業績、安定成長の優良株でさえ10倍以下だ。

ひとつ、注意は商社だ。PERの割安度でスクリーニングすれば商社が上位にずらっと並ぶ。商社は万年割安の代表だ。理由は様々考えられる。「コングロマリット・ディスカウント」なのかもしれないし、シェール革命に加えて新興国経済低迷→資源・エネルギー価格低迷という図式が商社株の上値を抑えるのだろう。だから短期的なバリュエーションの修正は期待しにくい。ここを逆張りで拾って悪いことはないが、利益を生むのに時間がかかると覚悟して投資するのが無難である。

これまで列挙してきたように、日本を代表する内需・外需のコア銘柄でポートフォリオを組めば、その割安修正だけで5割のリターンが期待できるのだ。それも大幅な修正は必要ない。せめてマーケット並みにまで修正されればよいだけだ(PER10倍→15倍)。

いかにも確度の高いストーリーだと思いませんか。こんなチャンスを提供してくれている東京市場の未熟ぶりに感謝しようではないか。

今日は節分。「季節を分ける」という意味だ。暦の上では明日から春が立つ。株式市場も今日がまさに陰の極、明日から春へと向かってほしいものである。




(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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