アメリカの過剰消費という世界経済の成長エンジンはもはや止まった。ジョージ・ソロス氏は「次なる原動力は代替エネルギーと省エネルギー技術への投資に求めるべき」と語る。

ソロス:スーパーバブルにおける成長のエンジン(原動力)は米国の消費者です。米国の消費者は、生産する以上に消費しています。

 そして、さまざまな理由から私たちは経常赤字を積み上げることが可能であり、その額はGNPの6.5~7%にも達しました。また消費者、というか住宅所有者は、自らの住宅ローンによるエクイティから資金を引き出していました。これが最終的には、年間約9000億ドルにも達していました。これが世界の成長のエンジンだったのです。

 しかしそのエンジンは今や止まっています。というより、故障してしまったのです。ですから、別のエンジンが必要です。

 私の考えでは、結局のところそれはエネルギー関連の問題になるでしょう。地球温暖化は私たちの文明にとって脅威であり、対処が必要ではありますが、現実には対処されていません。

 また一方で、化石燃料、特に石油を採掘するコストが上昇し続けていること、そしてもちろんエネルギー依存度が上昇していることも私たちの懸念の的になっています。

 これら三つの要因はすべて、代替エネルギー源の開発と省エネルギー技術への投資を必要としています。そしてこれが私たちをリセッションから救い出す経済の原動力となるべきです。

 リセッションの際には、失業者というリソースが生じます。彼らに、失業手当を支払うのではなく、より適切に雇用する、つまりその(代替エネルギー源・省エネルギー技術といった)方向で活用するのです。これが、私たちが今迎えようとしているグローバルなリセッション・恐慌から抜け出す道であると私は思います。

・動画版はこちらをご覧ください。

ジョージ・ソロス(George Soros)
ハンガリー・ブダペスト生まれのアメリカ人投資家。1970年、ジム・ロジャーズとともにソロスファンド(後のクォンタムファンド)を設立。10年間で3000%を超すリターンを叩き出す。その後、1992年に英国政府の為替介入に対抗しポンドへの大規模な空売りを実施、巨万の富を得たことで、投資家としての世界的な地位と名声を確立する。現在は、ソロス・ファンド・マネジメント及び私財をつぎ込んで設立したオープンソサイアティ財団(慈善事業団体)の会長。

Big Thinkとは?
ハーバード大学出身のピーター・ホプキンス氏が2008年1月に、ローレンス・サマーズ元米国財務長官らの協力を得て、立ち上げた“知識人”のための討論サイト。著名人の動画インタビューを中心に、政治から経済、科学、文化など幅広いテーマを取り扱っている。ダイヤモンド・オンラインでは今後、Big Thinkのコンテンツを動画とテキストで定期的に掲載する。