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2月5日 18時0分
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急落後の株価水準をどう考えるか〜日本株の下落幅が大きい理由〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

昨晩(2月4日)に当社オンラインセミナー「チャット駆け込み寺」において、皆様の質問にお答えしながら、現在のマーケットについて筆者なりの考えをご説明しました。昨日日経平均が急落した後ということで、通常の倍近い方にご参加頂きありがとうございます。

以下は、そこでご説明した筆者の考えなどをご紹介させて頂く。昨晩(2月4日)、ダウ平均株価は反発したが、1月後半以降の混乱で米国株は急落、長期金利も大きく低下し、いずれも11月初旬の水準にある(グラフ参照)。


「なぜこの急落局面で、日本株の下落率が他国より大きいのか?」というご質問を頂いたが、2月4日の急落で日経平均株価は11月初旬の水準とほぼ同じである。日本株の下落率が大きいのは、11月半ばからの日本株の上昇率が高かった反動だろう。昨年11月初旬からの世界の株式市場の「行って来い」が、日本市場でも起きたと位置づけられる。

11月初旬といえば、11月8日発表の米雇用統計が上振れ、米FRBのテーパリング(量的金融緩和縮小)への思惑が再び高まる前である。先のグラフが示す通り、その後12月半ばのテーパリング実現を挟み、株高・長期金利上昇が続いた。米経済が加速(一部は出来すぎもあった)し、米政治混乱に起因するリスクが和らいだ。テーパリングが「米経済正常化の証」とされ、決定後に大きく株高が進む局面があった。

1月後半からの市場の混乱は、新興国通貨の大幅安がきっかけとなった。この要因の一つは、FRBのテーパリングの「負の部分」と解釈できる。12月半ばのテーパリング開始後に、市場で軽いユーフォリアが起きそれが剥げ落ちたとみれば、先週までの米国の株安・金利低下はある程度理解できる(1月31日レポート)。

その後、今週ISM製造業景況指数の悪化で、11月初旬の水準まで、米国株は急落、長期金利が低下した。11月初旬は、米FRBの金融政策がどうなるか市場では見方が定まっていない局面である。この時点まで、株安・金利低下が進むのは、現在の米国の経済動向を踏まえると説明し難い。

であれば、FRBの政策変更を巡る市場心理のスイング(楽観→悲観)が、今度は悲観に傾きつつあると解釈できる。「FRBのテーパリングをきっかけに世界経済全体が大きく減速するストーリー」を市場が織り込む局面に入りつつあると言えるだろう。このシナリオの蓋然性は相当低く、リスク資産を買う好機と考えている。

また、「混乱に歯止めがかかる、きっかけは何か?」という質問を頂いた。これについては難しいが、一つは米国の経済指標の悪化が一時的であることが経済指標で判明することである。目先は、今週末の1月分の雇用統計が大きなイベントになる。

「雇用統計に、どうポジションをとれば良いか」という質問を頂いた。ただ、今週末の雇用統計は、天候要因のブレに加えて、先月の数字を含め過去統計のリバイスも起きる。どの程度の数字になるか、普段よりも予想が難しく、エコノミストに対する調査であるコンセンサスもほとんどあてにならない。敢えて言えばコンセンサスが高すぎるかもしれないが(+18.4万人 ブルームバーグ調査)、雇用統計に予断を持つのは相当リスクが大きくお勧めできない。ただ、米国の底堅い景気回復は、いずれ明らかになるだろう。

混乱が落ち着くもう一つのきっかけは、今回の市場の混乱のきっかけとなった新興国通貨の下落(テーパリングの副作用?)が落ち着くことが挙げられる。これらの通貨がいつ、どのようなきっかけで安定するかについて、正直確たることは言えない。ただ。1月27日のレポートでお伝えしたが、今回のアルゼンチンまで波及した通貨安は、2013年5月から始まった新興国通貨安の最終地点と位置付けることができるのではないか。

いわゆる「Fragile 5(脆弱な5つの新興国)」の通貨の推移をみると、ブラジルレアル、インドルピーについては、既に2013年8月末までに同年5月から20%の通貨安を経験している(グラフ参照)。


今回の混乱で、一段と通貨安が進んでいるのはトルコリラ、南アランド、インドネシアルピアだが、いずれも2013年8月末にレアル、ルピーと同様に約20%通貨安が進んでいる。つまり、Fragile 5の中で出遅れていた国をターゲットに、今回通貨安が進んでいる。レアルやルピーの経験則に過ぎないが、テーパリングへの思惑で起こる20%の通貨安は、歯止めがかかる一つの目安かもしれない。


また、固定相場制度だと発生し易い通貨危機が起こる前に、変動相場制度では通貨が安すぎれば市場で買いが入りうる。一方現在メディアでは、新興国の通貨安について、「先が見えない深刻な問題」という解説だけが聞かれる。

もちろん、今回の通貨安で、トルコ、南アフリカは中央銀行による大幅な利上げで対応せざるを得なかった。この対応が当該国の景気減速をもたらすリスクはあるが、これが先進国経済の大幅な減速につながる可能性は限定的だろう。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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