2013年1月、厚生労働省は生活保護費のうち生活扶助費を引き下げる方針を明らかにした。この引き下げは、2013年8月1日より既に実施されている。

生活保護制度を変質させ、縮小させようとする国の目論見が、生活扶助費にとどまる気配はない。生活保護制度のありとあらゆる部分に及ぼうとしている。

今回は、2013年10月から再開されている生活保護基準部会より、住宅扶助に関する議論を紹介する。生活の根幹である「住」の最低ラインは、どうなろうとしているのだろうか?

約10ヵ月ぶりに再開された
生活保護基準部会

 2013年10月4日、厚生労働省内で、社会保障審議会・生活保護基準部会(第14回)が開催された。2013年1月18日以来、約10ヵ月ぶりの開催であった。

 生活保護基準は、5年に1回、生活保護基準部会(以下、基準部会)を開催して見直すこととなっている。これは2004年12月15日、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」で定められた。以後、2007年・2012年に見直しが行われている。

 2007年の見直しでは、生活保護基準の引き下げは行われなかった。しかし2012年の見直しにおいては、生活保護を利用しているほとんどの世帯で大幅な生活扶助の引き下げという結論となった。この引き下げは、2013年8月1日より実施されている。引き続き、2014年4月1日(注)・2015年4月1日の3回を合計して最大8%、生活扶助の減額が行われる予定である。また、2013年末に支給された年末一時扶助に関しても、大幅な減額が行われている。

 なお、引き下げの根拠とされているのは、基準部会が2013年1月21日に発行した報告書であるが、この報告書の中には「だから生活扶助等は引き下げることが妥当」という内容の文言は含まれていない。むしろ、結論を導くに至った手法の限界や問題点・生活保護当事者に支給される金額の引き下げに対する慎重論の方が色濃く見られる。なぜ、この報告書に即して、「生活扶助は引き下げられるべき」という結論を導くことができるのか。筆者には理解できない。

(注)
予定されていた引き下げ幅に対し、物価上昇・消費税率が5%から8%となることを考慮した加算が行われる結果、多くの生活保護世帯で、生活扶助の金額は微増または微減となる。ただし、物価上昇の反映は充分であるかどうか・そもそも引き下げを断行することが妥当であるかどうかなど、問題視されている点も未だ数多い。