費用の範囲が広がったことで申告する人が増える?

 ではなぜ、この制度が今年の確定申告で注目されているかというと、実は2012(平成24)年度税制改正で特定支出の範囲が広がり、金額の判定基準についても見直しが行われたためなのです。
 今年の確定申告分つまり2013(平成25)年中に支出した費用において、新たに同控除の対象に加えられたものには、次のような費用があります。

1.職務遂行に直接必要となる弁護士や税理士などの資格取得費
2.職務と関連のある図書の購入費
3.職場で着用する衣服費
4.職務に通常必要な交際費
など。

 いずれも「職務に必要」というのが必須条件ですが、図書費については、職務と関係があれば新聞や雑誌のほか、電子書籍等の電子媒体も対象になるとされています。
 営業のために業界新聞や専門誌を購読したりするのも含めていいでしょう。

 また衣服費は、たとえば社内規定で服装が決められているような場合に、サラリーマンのスーツやワイシャツ、ネクタイのほか、クールビズの慣例のある会社はクールビズ用の服も対象になると言われています。

 さらに、営業マンが自腹で得意先を接待した場合なども「交際費」として対象になるようです。
 税理士事務所や弁護士事務所で資格を取ろうと専門学校などに通っている人などにとっては朗報でしょう。
 もちろん問題は誰が猫の首に鈴をつけるか、つまり確定申告するか、ですね(笑)。
 ただし、図書費、衣服費、交際費についてはトータルで65万円が上限とされています。
 経費の範囲は拡大した一方で、これまで青天井だった控除額に初めて上限規定が設けられたことになります。

 このほか、「特定支出」に取り込まれる金額の判定基準も「給与所得控除額の2分の1を超えた場合(給与収入1500万円超については125万円を超えた場合)」に改正されました。
 たとえば、年収700万円の人は、給与所得控除190万円の半分、95万円を超えた金額を給与所得控除後の金額から差し引ける計算になります。

 このように制度は拡充されたものの、元々利用者が少ない制度ですので、「特定支出控除を適用すると調査が入る」という噂があとを絶ちません。

 というより、そもそも全国で数人しか利用されてなかったのですから、実態がどうなのかは国税当局だって直接知っている調査官はほとんどいないわけです。
 ですので、確かに、この制度を利用すると税務署から「ちょっと話を伺いたい」といったような電話が来る可能性は高いかもしれませんね。