星に導かれ自由に生きる

安藤 この『嫌われる勇気』というタイトルが、今ほど刺さる時代はないですよね。SNSの普及によってつながれる人の数が増え、できることなら誰ともうまくやりたいと思う一方、意図せずに嫌われてしまうなんてことも頻繁に起こります。嫌われたくないという気持ちと裏腹に、人から嫌われていることが「見える化」してしまう時代になったんですね。

岸見 仮に、誰からも嫌われていない人がいるとしたら、その人は非常に不自由な生き方をしていると考えられます。皆に気に入られるということは、他者の期待を満たすために生きているということであり、それでは自分の人生を生きているとは言えません。人から嫌われるということは、自由に生きるために支払わなければいけない代償ですし、自分が自由に生きていることの証なんです。

【安藤美冬×岸見一郎 対談】(後編)<br />「嫌われる」ことは、自分の人生を生きることだ「他者に嫌われるということは、自分が自由に生きていることの証である」という考えに深く共感する安藤さん。

安藤 他者に嫌われるということは、自分が自由に生きていることの証である……そのとおりだと思います。

岸見 そう意識しなければ、自分の不幸の原因を他人や周囲の環境、過去の生い立ちに押し付けてしまうようになる。だから、「嫌われる」という言葉にはネガティブなニュアンスがあるかもしれませんが、このタイトルはとても気に入っています。

安藤 私は、自分らしい人生を生きるということについて、覚悟を持って追求しているつもりです。ですから、この『嫌われる勇気』というタイトルと先生の言葉に勇気をもらいました。

岸見 そう言っていただいて、うれしいです。

安藤 私がこの本のなかで一番好きな表現は、「より大きな共同体の声を聞け」という言葉です。これは図らずも実践してきたこととシンクロするような気がしています。私は父が教師で母が専業主婦という平凡な家庭で生まれたんですけど、「自分らしい人生を生きるために、より広い世界に出る」ということに幼い頃から強い関心を持っていました。幼少期から海外文学を読みあさり、10代で海外に出て、その後50ヵ国近くを旅し、オランダにも留学。社会人になってからも、一度入った組織を飛び出して現在があります。知らず知らずのうちに、今いる小さな世界から外に出ていくことを意識していたように思います。