別のメーカーの社内大学では、部課長クラスが参加するコース、係長クラスのコース、30歳前後の若手のためのコースというようにレベルを分けている。係長や部課長のコースでは、現在および将来の経営課題へ取り組み、若手対象のコースでは、かつての経営課題に対して、経営目線で取材分析を行うという課題が与えられるという。このように、段階的に変革の経験を積ませることも有効である。

第2のマネジメント:
学習志向を人事制度に反映させる

 マネジャーの成長を促す第2のマネジメントは、目先の成果追求だけでなく、挑戦・好奇心・独自性を重視する学習志向を、採用・教育・評価の中に取り込むことである。

 私は、東京大学准教授の中原淳氏およびダイヤモンド社と共同で、WPLという職場学習診断ツールを開発したが、この中には学習志向を測定する質問項目が含まれている。WPLを導入している某製薬会社の人事マネジャーによれば、職場で伸びている若手社員は、学習志向のスコアが高い傾向にあり、逆に、あまりうまく育っていない若手はこのスコアが低いという。このように学習志向を定期的に診断すれば、教育プログラムを用いて学習志向を高めたり、人材の選抜に利用することができる。

 また、あるメーカーでは、技術者が「やりたい」と手を挙げた研究テーマは、基本的には反対しない方針をとっており、また、果敢な挑戦姿勢が昇格の要件となっている。こうした開発体制によって、研究者や開発者の学習志向(好奇心・挑戦・独自性を重んじる姿勢)を枯れさせない努力をしているのだ。

 企業では短期的な成果に目が行きがちであるが、採用・選抜・教育・評価など、さまざまな人事制度の中に学習志向を組み込んでいくことが、長期的に見て、マネジャーの育成につながるのである。