第3のマネジメント:
社内の対話を促進する

 マネジャーの成長を促す第3のマネジメント手法は、社内外の上位者やキーパーソンと対話する場を積極的に設けることである。

 中堅IT企業の中には、ランチ代を会社が支給した上で、話をしてみたい役員やマネジャーを社員が逆指名しランチを共にするイベントや、役員と社員がくじを引き昼食をともにするランダムランチを導入している企業がある。

 また、ある飲料メーカーでは、全社的なフォーラムを通して、社内の人材交流を進め、部門連携を推進している。そのきっかけは、生産・物流・営業の各部門間に見えない壁が存在していたためであったという。同社は、この壁を打破するために、自由参加のフォーラムをさまざまな形で定期的に開催することで、部門間の対話を促している。

 上司による支援というと、コーチングや権限委譲ばかりが強調されるのに対し、部門や組織を越えた対話支援に目が向けられていないケースが多い。上述したランチや自由参加のフォーラムは、普段会うことが難しい他部署の同僚や上位者と対話する有効な手段になるだろう。

マネジャーの
体系的な育成システム

 以上の3つのマネジメント手法を踏まえ、マネジャーの育成システムを図式化したものが下図である。ここでは、キャリアをフェーズⅠ(担当者~係長クラス)、フェーズⅡ(課長クラス)、フェーズⅢ(部長クラス以上)に分け、それぞれの段階において、成長テーマ、仕事経験、組織的支援、評価・診断のあるべき姿を明示した。

優れたマネジャーになる・育てる(第3回) <br />マネジャーを育成する仕組み作り<br />――北海道大学大学院教授 松尾 睦