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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

賃上げは道半ば、
波及を強める良策はあるか
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]
【第126回】 2014年2月12日
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 安倍首相は、「この春こそ、景気回復の実感を収入アップというかたちで国民の皆様にお届けしたい」と胸を張っている。念頭に置いているのは、昨年秋から行った政労使会議で、経済界に賃上げを要請したことである。その成果が今春闘に反映されると見越して、賃金上昇が家計を潤すと言っている。

 しかし、賃上げが十分に進むかどうかはまだ不確定である。労務行政研究所が1月15日までに実施したアンケートでは、2014年の東証1部・2部上場級の主要企業を目安にした賃上げ率の予想は、2.1%(定期昇給を含む)となっている。

 ただし、ベースアップに絞って、「実施する予定」と回答した経営者は全体の16.1%と少ない。画期的な成果は期待できないものの、筆者は2007・2008年の賃上げ率を少し上回る待遇改善になると見込んでいる。

 では、上場企業の2%前後の賃上げ率に対応して、日本全体の賃金上昇にどのくらい寄与しそうなのか。毎月勤労統計のベースに計算し直すと、定期昇給を除く賃金上昇率は0.9%になる見通しだ。これだけの賃上げ率では、消費税増税の1世帯の負担増を完全にカバーすることはできない。

 たとえば、消費税増税の負担増は年間8.1兆円である。勤労者世帯だけに限った消費税増税の負担増は4.4兆円。これに対して雇用者報酬が0.9%増加したと仮定すると、勤労者の所得増は2.3兆円に止まる。

 もう1つの課題は広がりである。2014年に期待される賃金上昇は、大企業の正社員に限定されていて、中小企業や非正規雇用者には縁遠いと考えられている。

 財務省「法人企業統計」を使って、資本金10億円以上の企業の人件費が、資本金1000万円以上の全企業の人件費のどのくらいを占めているかを計算すると、29.5%(2013年7-9月までの1年間の累計)であった。全体の約3割の企業の正社員の賃金上昇が実現できても、全体への寄与度はどうしても限定されてしまう。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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