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過度の悲観はとりあえず修正 - 村上尚己「エコノミックレポート」

1月後半から新興国に対する懸念でマーケットは大きく揺らぎ、先週2月3月(月)に発表された1月ISM製造業景況指数の下ブレで不安心理が強まり、米国市場で株価が急落・長期金利も大きく低下した。ただ、この市場の値動きは、悲観に傾きすぎていたようである(2月5日レポート)。

その後、先週末までに、株価、長期金利ともに上昇に転じ、ほぼ1月末の水準まで戻した(グラフ参照)。2月3日の「ISMショック」で急浮上した、新興国の混乱をきっかけに、米国を含めて世界経済が減速するとの懸念は、米国市場でとりあえず拭われた格好である(なお日本株は、2/10昼時点で1月末の水準に戻っていない)。


先週末(2/7)に発表された1月雇用統計に対して、失業率低下を好感し米国株市場は上昇した。ただ失業率は低下したが、企業への調査における雇用の伸びは停滞する評価し難い結果である。非農業雇用者数は+11.3万人と、先月(12月 +7.5万人)に続き2か月連続で悪く、11月まで続いた+20万人/月のペースから減速している。これは寒波で説明できる面もあるが、天候の影響を受けづらいサービス業の雇用が2か月連続で停滞するなど、すべてを天候要因で片づけるのは楽観的だろう。

雇用統計を素直にみれば、米国経済は最近やや減速しているとみられる。問題は景気減速の程度だろう。他の統計をみると、1月に明らかに悪化したのはISM製造業景況指数で(天候要因が極端に表れた)、それ以外の複数の経済指標は1月に改善が続いており、悪い指標ばかりではない。米経済は13年10-12月期まで年率3%超に加速したが、その反動減と寒波の悪影響が重なり+2%前後の巡航速度のペースに落ち着きつつあるとみられる。こうした軽微な景気減速なら、FRBの現行のテーパリングなどの政策対応は変わらないだろう。

また、1月後半から市場が混乱したのは、新興国の通貨下落という予想外の出来事がきっかけだった。新興国の通貨下落(テーパリングの副作用)とそれがもたらす混乱が、米国など世界経済の足かせになるリスク、それが投資家の不安心理の根幹にあった。

1月末と先週末(2月7日)の米国株価・長期金利の水準はほぼ同じだが、昨年末までのテーパリングに対する過度の楽観(軽いユーフォリア)が剥げ落ち、その揺り戻しで12月中旬のテーパリング決定前の水準まで戻ったと位置づけることができる(グラフ参照)。1月31日のレポートでお伝えしたが、テーパリングに対する「楽観の揺り戻し」が起きたという視点でみれば、現在の米国の株価水準が割高とは言い難い。少なくとも、楽観ムード一色だった年末までのような危うさを警戒する必要はないだろう。


一方、世界の金融市場の混乱のきっかけとなった、新興国(fragile 5)の通貨をみると、いずれも下げ止まりつつある(グラフ参照)。中でも、トルコリラは、新興国通貨への懸念が台頭する以前の、1月16日頃まで通貨高となっている。トルコや南アフリカなどの政府の対応が功を奏し、1月27日レポートで紹介したが「通貨安が進み割安とみなされれば買いが入る」という状況になりつつある。新興各国について楽観できる状況とは言えないが、一連のマーケットの混乱を考える上で明るい兆しの一つである。


これらを踏まえると、先週一時過度の悲観に振れ過ぎた金融市場は、落ち着きを取り戻しつつある。今週イエレン新議長による議会証言を含めFRBの政策への思惑や、寒波による米国経済指標の歪みが続くので、目先は市場が揺れ動く場面が続くかもしれない。ただ、筆者が想定しているとおり足元の米国経済の減速が軽微と判明し、新興国通貨安に起因する混乱が落ち着く中で、今後市場の不安心理は更に和らぐだろう。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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