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アマデウスたち

久住有生
伝統の自負と進化の野心

週刊ダイヤモンド編集部
【第27回】 2008年5月2日
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久住有生
写真 加藤昌人

 鏝(こて)一つ持って、世界中の建築現場を渡り歩く。壁に使う材料には、必ずその土地の土を使う。パリでは郊外まで土を探し求め、亀裂防止用のすさは麦わらを細かく切って代用し、茶室を仕上げた。米ソルトレークシティでは、石膏に混ぜる糊が手に入らず、チーズから作った。「どんな材料でも使いこなすのが本当の職人」と言う。

 高校3年生の夏、欧州を一人旅し、アントニ・ガウディの建築に心を打たれた。それ以来、幾度となく各国を訪ね歩き、伝統の技を学んでいる。チーズの糊はイタリアで習った。

 欧州からシルクロードを渡り、飛鳥時代に伝来した左官技術は、1000年の時を経て、江戸時代末期に独自技術として昇華した。職人たちによって伝承されてきた「世界に誇るべき」伝統の技が急速にすたれようとしている今、強い自負を持って、現代建築にその技を生かし、さらに進化させようとしている。

 2006年、愛知県常滑市で完成した「土・どろんこ館」では、300トンを超える大量の土を使い、版築と呼ばれる工法で高さ8メートル、厚さ50センチメートルの大壁を築いてみせた。風雨にさらされれば、表面の土がはがれ落ちる。だが、「頑丈に、寸分の狂いもなく仕上げることだけが技ではない」。長い歳月を経て、土壁は深みのある美しさを醸し出すようになる。自然の一部となった久住有生の壁は、思わず手を触れたくなる。

(ジャーナリスト 田原 寛)

久住有生(Naoki Kuzumi)●左官。1972年生まれ。3代続く左官の家に生まれ、3歳から鏝を握る。18歳で親元を離れ、本格的な修業を開始、23歳で久住有生左官事務所設立。金閣寺・桂離宮の修復作業などを通じて伝統技術を学び、27歳で建築家・日置拓人と、南の島工房設立。サーフィンをこよなく愛す。

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