GMS(総合スーパー)が不振の度を増している。セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ:東京都/村田紀敏社長)傘下のイトーヨーカ堂(東京都/亀井淳社長)は、2009年3~8月期決算で上場来初の上期営業赤字に転落した。厳しい消費環境が続く中、試練が続きそうだ。(取材・文/「チェーンストアエイジ」下田健司)

セブン‐イレブンも営業減益に

 セブン&アイの09年3~8月期連結決算は、営業収益が対前期比11%減、経常利益が同19.9%減と2ケタの減収減益に終わった。

 グループの事業は総じて不調で、金融関連事業を除くと、コンビニエンスストア事業・スーパーストア事業・百貨店事業・フードサービス事業がすべて営業減益という厳しい結果であった。

イトーヨーカ堂が上期初の営業赤字

 稼ぎ頭であるCVS(コンビニエンスストア)のセブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン:東京都/井阪隆一社長)でさえ、営業利益は同10.2%減。タスポ(成人識別タバコ自販機用ICカード)効果で09年2月期通期の既存店売上高は好調だったが、この上期はその反動もあってか同0.0%と前期並みにとどまり、既存店売上の伸びにブレーキがかかった。通期についても、既存店売上高が同0.5%減、営業利益が5.7%減という厳しい見通しだ。

 不振が続いている百貨店事業は大きな落ち込みに見舞われている。09年8月にミレニアムリテイリング、そごう、西武百貨店の3社が合併して誕生したそごう・西武は既存店売上高が同10.1%減で、営業利益は同69.1%減。8月にそごう心斎橋店、9月には西武札幌店を閉鎖するなど不振店舗の閉鎖を進める一方で、基幹店舗である西武池袋本店でイトーヨーカ堂やヨークベニマル(福島県/大?善興社長)のノウハウを生かした生鮮売場を展開するなど改革に取り組んでいる。

 百貨店事業はこれまで目立ったグループシナジーを発揮できずにいたが、百貨店市場そのものが縮小に向かう中で、相乗効果を出す取り組みがさらに求められていきそうだ。

不振店舗20~30店舗を閉鎖へ

 百貨店事業と並んで深刻な落ち込みに見舞われたのがスーパーストア事業である。中でも大きく足を引っ張ったのが、上場来初の営業赤字に転落したGMSのイトーヨーカ堂である。既存店売上高が同5.3%減と落ち込み、営業収益が同5%減、営業損益は43億円の赤字となってしまった。

 商品別売上高に見ると、食品は同1.4%減であったが、衣料が同9.5%減、住居が同7.4%減と大きく落ち込んだ。売上の5割近くを占める食品は、なんとか落ち込みを小幅にとどめているが、衣料・住居の低落傾向は一向に改善されていない。その結果、「食品で挙げた収益を衣料と住居が奪っている」(セブン&アイ村田社長)状態が続いている。

 不振店対策として開発したDS(ディスカウントストア)業態「ザ・プライス」は10店まで増えたが、黒字の西新井店を除くと赤字が続いている状態。収益業態として確立するには時間がかかりそうで、全体の収益改善のためには店舗の統廃合は避けて通れない。

 イトーヨーカ堂は20~30店舗の閉鎖も打ち出し、すでに10年2月期下期に富士(静岡県:売場面積6912平方メートル)、苫小牧(北海道:同9165平方メートル)、石巻中里(宮城県:同2693平方メートル)、塩尻(長野県:同7343平方メートル)などの店舗閉鎖を決めており、来期は7店程度の閉鎖を計画している。

 10年2月期通期は10億円の営業利益を計画しているが、計画達成に向けて村田社長は「仕入れ原価の低減が重点になる」と言う。経費削減についても、すでに上期に65億円の経費削減を実施済みだが、下期はその2倍に当たる130億円の経費削減を予定している。消費環境は依然として厳しい状況に変わりはなく、価格競争も収まりそうにない。当面は“守り”の経営が続くことになりそうだ。


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