去る7月29日、マイクロソフトとヤフーの“検索提携”が発表された。18ヶ月前に勃発したマイクロソフトによるヤフー買収騒動が、ここへ来てようやく決着した格好だ。

 だが、この提携に対する市場の冷ややかな反応に一番驚いたのは、両社のCEOだろう。発表を受けてマイクロソフト株は1%とやや上昇したが、ヤフー株はいきなり12%も下落した。18ヵ月前、マイクロソフトが提示した買収額は450億ドルだったのに、今回は何の前払いもない“ただの提携話”。ヤフーの株主は、すっかり気落ちしてしまったのかもしれない。

 ヤフーのキャロル・バーツCEOは、「説明が足りなかった」と慌てて言い出す始末。少し前に、「ヤフーの検索と提携したいのならば、マイクロソフトは大金を積まなくてはね」という内容のコメントを業界の会議で発したのも、株主の期待をむやみに高める結果となったようだ。マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOまで、ヤフー株主の落胆をなだめようとあちこちで釈明に追われているありさまだ。

 しかし、バルマーCEOからすれば、これしきのことは、さほど苦痛ではないかもしれない。株価が示しているように、今回の提携話は、マイクロソフトの利のほうが明らかに大きいからだ。

 たとえば、マイクロソフトによるヤフーの検索技術統合は、言い換えれば、検索部門の実質的な買収に等しい(ただ、後述するように、ディスプレイ広告技術は例外)。ヤフーのライセンスを受けて、“美味しいとこ取り”をした上で、自社の検索エンジン「Bing」マークをつけて、世間にアピールすることができる。

 ヤフーは創設15年来、インターネットサイトのカテゴリー化を行ってきた企業だ。今でも優れたエンジニアをたくさん抱えている。今回の提携によって、マイクロソフトは、彼らからアルゴリズム最適化などの知恵を貰い受けることができるようになる。

 また、検索広告のプラットフォームにはマイクロソフト自社製のアドセンターを利用することになっている。アドセンターは、ヤフーのパナマ・プラットフォームよりも数段良質で、ひょっとするとグーグルの技術にも引けを取らないのではと広告業界では評価が高いが、これまではユーザー数があまりに少ないために、その利点を活かすことができなかった。だが、プラットフォームを握った上でユーザーが増えれば、消費者のクリックや購買行動のデータを把握できるようになるだけでなく、そのデータをさらにアルゴリズムの改良に役立ていることができるようになる。