世界最大で唯一の総合楽器メーカー、ヤマハ。2013年4~9月期決算で、通期業績予想を上方修正する回復基調にある中、中期経営計画の目標達成は、新興国での拡販にかかっている。

「中期経営計画(の目標達成)を成し遂げる」──。昨年4月、2016年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画を打ち出したヤマハ。同月末、新たにトップに就任した中田卓也社長は会見で、そう意気込みを語った。

 その双肩に課せられたハードルは低くはない。中計では、売上高で13年3月期の3670億円から4300億円へと630億円の上積み、また、営業利益では同90億円の3倍以上、300億円という高い目標を掲げているからだ。

 直近の13年4~9月期決算では、14年3月期の売上高を10年3月期以来の4000億円台となる4080億円と見込み、目標はすでに射程内にあるように見える。だが、この売上高のうち、足元の想定を超えた円安による増収が、372億円を占める。為替影響額を除いた売上高で見れば、前期比でほぼ横ばいというのが実情だ。

 中計で示した「持続的成長」という経営方針に基づいて数値目標を達成するには、主力の「楽器事業」、特に伸び悩んでいる楽器販売でどこまで反転攻勢できるかにかかってくる(図(1)。14年3月期の「音楽事業」の売上高は、同期より同事業から分離した「PA機器」の売上高を含めている)。

 世界の楽器市場規模は、約6200億円(13年3月期。卸売りベース)に上り、ヤマハはその中で25%のトップシェアを誇る。中でも、アコースティックピアノ(シェア34%)や、電子ピアノなど電子鍵盤楽器(同50%)は圧倒的な強みを持つ。

 実はヤマハは世界唯一といっていい総合楽器メーカーであり、それ以外は、個々の楽器に特化した専業メーカーがひしめいている。

 ただ、先進国を中心とする楽器市場は長く頭打ちの状態にある。