損益分岐の計算は、
小学校高学年の算数で十分わかる

先生 さて、本題にもどって、ゴーン・マジックの秘密を考えるとしよう。

有価 さっきの「腰を抜かすほど」の改善がどうなされたか、ですね。

先生 そうだ。その秘密は、端的に言えば、日産は平成11年では136万7,000台つくらないと赤字だったのに、平成13年では97万台つくれば黒字になるという、まるで別会社の別事業のような損益構造に変身したからだ。

経太 それ、「損益分岐点」の話ですね。考え方としては聞いたことがありますし、計算式やグラフを経理の本で見たこともあるのですが、難しくてよく憶えていません。
どうすれば計算できるのですか。

先生 なに簡単じゃよ。数式を憶えようとか、グラフから連立方程式を解こうとするからおかしくなる。ものの考え方さえしっかりわかれば、小学校高学年の算数、つまり、足し算・引き算・掛け算・割り算ができれば、損益分岐点はごく簡単に計算できる。

有価 先生、それです。損益分岐がやさしく理解できる方法を教えて下さい。

先生 そうだね。小学校1、2年生の計算問題からはじめよう。
りんご1個の売値が100円。仕入は60円です。
りんご1個売ったらいくらもうかる。3個ならどうかね。

経太 1個売ったら儲けは100 - 60 = 40円、3個なら120円です。

先生 では、1日8,000円でアルバイトを雇ったら、いくつ売れば事業が成り立つ、有価さん?

有価 そうですね、アルバイト代を支払う分の「儲け」がないとダメですよね。1日で8,000円÷40円=200個以上売らないと損になります。