海外の有識者や政府関係者の疑問
日本は国益をどう判断しているのか?

 最近訪日する外国のジャーナリストや学者、あるいは政府関係者から最も頻繁に質問を受けるのは、日中関係や日韓関係が一体どうなっていくのか、ということである。彼らの関心は次のようなことである。

 少なくともこの2~3ヵ月を見れば、安倍首相の靖国神社訪問やNHK会長並びに経営委員の発言など、日本国内の要人の言動が中国や韓国の反発を招いている。中国や韓国の反応は予期されたところであるが、米国の反発も公になっている。

 ところが、日本国内からは「このような要人の言動は受け入れられない」という声が高まっているとは感じられない。また、そもそも「日中・日韓関係は重要だから何とかしなければならぬ」という切迫感も感じられず、日中や日韓の政府間できちんとした話し合いが行われている気配も感じられない。

 一方、ワシントンやロンドンなどでは、日中両国の大使が激しい非難合戦を行っているように見受けられる。防空識別圏の一方的宣言や攻撃的な海洋活動で中国に対する批判が高まったが、日本の歴史に関連する言動の結果、残念ながら「どっちもどっちだ」といった受け止め方がされ出している。

 これは、国際社会における日本の評価が低下しているということである。日本国内では集団的自衛権の問題をはじめ、保守のアジェンダが次々と登場し、靖国神社への再度の参拝問題を含め、今後も近隣諸国との関係が悪化していくことすら考えられるが、それで良いということか。一体日本は、どのような国益判断をしているのか。

 これは日本に限ったことではなく、程度の差はあれ欧州や米国でもそうであるが、超保守的な勢力が勢いを増し、ナショナリズムが頭をもたげ、国々は内向きになっている。

 日本では、反中・反韓の雰囲気も充満している。先の東京都知事選挙では、社会、特に若者の保守傾向が顕著に表れたとされる。政党でも与党だけではなく、野党の中でも保守勢力が強くなっている。