前回、ミャンマーにおける過去の金融行政と、それによって生じた社会混乱についてお伝えした。金融システムに対する根強い不安とサービスの遅れは、ミャンマー経済における数多くあるボトルネックのなかでも、社会の仕組みの根底を揺るがすほど、影響の大きいものだ。今回は、現在のミャンマーにおいて、各銀行が直面している課題は何かについて見ていきたい。

独立性の維持から程遠かった
ミャンマー中央銀行

 日本においては、銀行等の金融機関の監督は、昔であれば大蔵省、今では金融庁といった機関が主要な役割を果たしている。一方で、東南アジアの多くの国においては、中央銀行が金融機関に対するコントロールを行っている場合が多い。ミャンマーにおいても、金融機関の監督を担うのは、主にミャンマー中央銀行になる。

 ミャンマーの中央銀行は、1990年のミャンマー中央銀行法(Central Bank of Myanmar Law)に基づき、財政歳入省の下に位置付けられていた。この意味することは何だろうか。

 中央銀行は、その立ち位置として、どれだけ独立性を維持できるかが重要な論点になる。中央銀行の重要な役割は、「物価の安定」だ。一方で、過去の多くの例にもある通り、中央銀行は政治からの圧力を受けてどんどんお札を刷り、その結果インフレを招く事態を起こしやすい。特に選挙の前には、市中への資金流入を高めて、景気を引き上げようとしがちだ。

 その結果、物価水準の安定性が損なわれ、結果としてインフレや、資産バブルにつながる場合もある。それを防ぐために、中央銀行をいかに政治的圧力から切り離すかが重要になり、そのために中央銀行の独立性が求められているのだ。