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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

黒人であるがゆえに微妙な立場に立たされたオバマ大統領

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第21回】 2009年8月10日
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 オバマ大統領は7月中旬に“有色人種の地位向上協会”(NAACP)の創立100周年記念パーティーで演説を行った。NAACP(National Association for the advancement of Colored People)は、アメリカ市民の間での、平等の実現と、偏見の撲滅を理念に掲げてきた団体である。

 オバマ氏は大統領の選挙期間中には、この団体とは距離を置いてきた。「自分は黒人の代表として選挙戦に出るのではない、アメリカ国民の代表として選挙戦に出るのだ」という思いが強かったからだ。だがこの7月にNAACPの100周年行事が巡ってきた。大統領がどのような演説をするのかが注目された。会場には数千人の聴衆が押しかけていた。ほとんどが黒人だった。演説は45分間続いた。

 オバマ大統領はまず、「この100年で黒人の地位は大きく向上した。今では大企業の社長になっている人もいるし、州知事、市長をやっている人も多い。(黒人の大統領が誕生したことで)差別はもはや問題ではなくなったと考えている人は増えているように思う。しかし間違ってはいけない。アメリカ社会のいたるところにまだまだ差別はある。むしろ過去の差別によって、所得・健康面で構造的な不平等が生まれている」と述べた。

 その解決方法として、「子供への教育が最も重要である。社会の高度化で大卒以上の学力を要求される職は増えている。黒人と白人の教育機会の不平等は、この50年で大きく改善されたにも拘らず、黒人生徒の半数は途中で退学してしまう。政府が様々な教育改革を行っても、生徒ひとりひとりの自覚なしには、改革は徒労に終わってしまう。」

 その自覚とは、「不幸にして犯罪と暴力が蔓延る地域で育ったとしても、自分の学業の失敗を環境のせいにしてはならない。その人の運命は他人が決めることができない。自分の人生を切り開いていくのは自分自身の責任なのだ。」と、本人の自覚を訴えた。

 両親に対しては、「子供が学習に専念できるように、配慮しなければならない。Xboxのようなゲーム機を取り上げ、PTAに参加し、宿題を手伝い、早めに就寝できる環境を作らなければならない。そして家庭内での教育問題にとどめず、コミュニティーとして子供の教育に当たることが重要だ」と、親の責任についても言及した。

 自分が、「シカゴの貧民街でコミュニティー・オーガナイザーとして働いていたときに、ある校長先生は次のように述べた。“入学当時には明るく希望に満ちていた子供たちが、学年が進むにつれ、黒人として生まれ落ちたがために、いくら努力しても希望は叶えられないではないかと塞ぎ込むようになる。”」と脱落者が続いている心理的要因も指摘した。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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