プロ野球に今季から導入されることになった投球制限時間「15秒ルール」が波紋を呼んでいる。「15秒ルール」とはどういうものか、改めて整理しておこう。

■投手はボールを受けた後、15秒以内で打者に投球しなければならないというルール。ただし、適用されるのは無走者の時だけ(塁上に走者がいる時は、けん制球を投げるケースが生じ、15秒以内は無理であるため)
■15秒は、ストップウォッチを持った2塁塁審が計測
■15秒以上経過すると、審判から「ボール」を宣告される

 これまでも投球の時間制限はあった。「ボールを持った投手が打者と正対してから12秒以内」というものだ。この12秒には捕手とのサイン交換は含まれるが、投球準備を整えた後なので余裕はある。サインに2~3度首を振っても大丈夫だし、もし時間をオーバーしてもスルーされるあいまいなルールだった。

 それに比べると新たな15秒ルールは短い。ボールを受け取ってからすぐに秒がカウントされるため、この間に球種を決め、投球動作に入らなければならない。投手が首を振り、捕手がサインの出し直しをしていたら、15秒などすぐに経ってしまう。

選手はもちろん、
ファンからもブーイング続出

 当然、影響を受ける投手たちからはブーイングが起きた。

 中でも声高に不満を語ったのは日本球界を代表する投手に成長したダルビッシュ有(北海道日本ハム)だ。「投手はロジンバッグを触ったり守備位置を見たり、することがたくさんある。これじゃ球種を3秒で決めないといけなくなる。野球にならないですよ」と。

 捕手たちも頭を抱えている。球種を考える余裕がなくなるから組み立てが単調になってしまう、というわけだ。ベテランキャッチャーは打者を観察して狙いダマを読み、その裏をかくサインを出すことがあるが、それもできなくなる。

 ファンからは賛否両論が出ているが、「否」の方が圧倒的に多い。ネットで語られている意見で目立つのは次のようなもの。――「野球の醍醐味は“間”だ。とくに投手と打者とが心理を読み合う“間”が面白いのに、時間制限をすればそれがなくなってしまう」。

人気低迷の打開策の1つが
「試合時間の短縮」?

 こんなにブーイングが多い15秒ルールはなぜ生まれたのか。

 目的はいうまでもなく「試合時間の短縮」である。日本野球機構(NPB)はプロ野球人気の低落傾向に頭を悩ましており、その解決策のひとつが試合時間の短縮なのだ。

 2008年のプロ野球の平均試合時間は3時間13分。ナイターの試合開始が夕方6時だとすると、終了するのは夜9時をまわることになる。これでは9時までのテレビ中継は延長なしでは最後まで結果を伝えられないし、球場に足を運ぶファンも帰宅が深夜になる。