ローマ帝国や脳神経科学まで、経営学は領域を超える

 この他にも、『領域を超える経営学』で紹介しているローマ帝国の勃興について研究した、これも経営学の一流紙である『Strategic Management Journal(ストラテジック・マネジメント・ジャーナル)』に掲載された2011年の論文(*1)は、ローマ帝国という研究対象がまずは目を引くでしょう。

 さらに、脳神経科学の知見や研究手法を戦略論の研究に活かせるのではないかと主張した、同じく『ストラテジック・マネジメント・ジャーナル』の2011年の論文(*2)も、みなさんが持つ経営学の研究手法のイメージを少し変えることができるかもしれません。

 経営学は、伝統的な経営学の領域を踏み越えて、極めて多様な「経営という行為と、それを行う小組織と個人」を対象として、これまでは用いられていなかったような研究手法を他分野から学び、それを取り入れて進化を続けています。

 実際、経営という行為とそれを行う組織と個人を、網羅的に、本質的に理解しようとすれば、その結果として、幅広く人間の社会的活動すべてを取り込んだ領域が、潜在的に経営学の観察対象となり得るのでしょう。

 拙著『領域を超える経営学』は、現代の「グローバル経営に関連する諸理論」をご紹介するために書き始めた作品です。しかし、このように幅広く、経営学が「領域を越えていく姿」を背景として、最終的には、紀元前3500年頃から西暦2100年頃までを視野に入れた長大な知の系譜をお伝えする著作となりました。

 本書を通じて、経営学の最先端の一端でも感じていただければと考えている次第なのです。

 さて、今回は長くなってきたのでこのくらいで。

 また次回お会いできるのを楽しみにしています。

 *1 Carmeli, A., and Markman, G.D. 2011. “Capture, governance, and resilience: strategy implications from the history of Rome.” Strategic Management Journal 32(3): 322-341.

 *2 Powell, T. C. 2011. ”Neurostrategy.” Strategic Management Journal 32(13): 1484-1499.

「マッキンゼーでのスライドは白黒」という話は都市伝説だった!?第3回では、琴坂氏のコンサルタント時代の経験をもとに、経営学にも欠かせない本質を読むことの意味に迫る。次回更新は、2月27日(木)を予定。


【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】

『領域を超える経営学——グローバル経営の本質を「知の系譜」で読み解く』(琴坂将広 

第2回<br />ケンブリッジ大学の食堂からローマ帝国まで<br />経営学の研究対象は学問領域を超える

マッキンゼー×オックスフォード大学Ph.D.×経営者、3つの異なる視点で解き明かす最先端の経営学。紀元前3500年まで遡る知の源流から最新理論まで、この1冊でグローバル経営のすべてがわかる。国家の領域、学問領域を超える経営学が示す、世界の未来とは。

 


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